島々にあふれる太陽光と海洋エネルギー、農業や造船業の復活にエネルギー列島2014年版(42)長崎(2/2 ページ)

» 2015年02月10日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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バイオマスと潮流発電にも大きな期待

 長崎県の再生可能エネルギーは太陽光が圧倒的に多い(図4)。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備を合計すると、県内の家庭の約半分で使用する電力をカバーできる。さらに太陽光に続いて風力やバイオマスも増えつつある。

図4 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 バイオマスでは大村市の取り組みが進んでいる。市が運営する下水処理場では、下水の汚泥から発生する消化ガスを発電に利用する。25kWの発電能力があるガスエンジン発電機を10台導入して2014年10月に運転を開始した(図5)。年間の発電量は190万kWhで、約500世帯分の電力になる。

図5 「大村浄水管理センター」の下水処理施設と消化ガス発電設備。出典:大村市上下水道局、月島機械

 大村市は発電機メーカーの月島機械とPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式の契約を結んでいる。初期投資が不要で、市は消化ガスと土地を事業者に提供して料金を受け取る仕組みだ。これまで廃棄処理していた消化ガスが新たな収入を生み出す。

 このほかに長崎県では未来の電力源として、海洋エネルギーの開発も活発になってきた。本土と五島列島のあいだにある西海市(さいかいし)の沖合で計画中の潮流発電が先行して進んでいる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて、小型の潮流発電機を開発するプロジェクトである(図6)。

図6 小型潮流発電の試作機。出典:長崎県産業労働部

 ダリウス型と呼ぶ垂直の翼を回転させる方式で、低速の潮流でも発電できるようにする狙いだ。地元の大島造船所が開発プロジェクトに加わり、1kWhあたりの発電コストを40円以下に抑えることが目標である。潮流発電は安定した電力を得られることから、低コストで実用化できれば離島の貴重な電力源になる。

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2016年版(42)長崎:「海が生み出す風力と潮流発電、陸上では太陽光から水素も作る」

2015年版(42)長崎:「島の海洋エネルギーで燃料電池船も走る、温泉地には地熱バイナリー発電」

2013年版(42)長崎:「離島に潜在する海洋エネルギー、地熱や太陽光を加えて供給率25%へ」

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