ユニリーバは、なぜ全ての電力を再生可能エネルギーで賄うのか自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2015年12月04日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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遠く離れた再生可能エネルギー発電所の電力が使えるグリーン電力証書

photo 日本自然エネルギー 代表取締役社長の寺腰優氏

 この送電線など再生可能エネルギーの発電所と利用者の距離を縮める仕組みの1つが「グリーン電力証書システム」となる。日本自然エネルギーの寺腰氏は「電力は発電し送電網に入れば、太陽光発電所で発電した電力も、火力発電所で発電した電力も全て同じになってしまう。そこで再生可能エネルギーで発電した電力量について一定量の保証を与え、遠隔地にある再生可能エネルギーの電力がほしい需要家と再生可能エネルギー事業者との取引を実現したのグリーン電力証書システムだ」と述べている。

 証書によって保障することで、再生可能エネルギーがほしい需要家は、通常の電力線から電力の供給を受けながら、証書により再生可能エネルギー分の上乗せ費用を払い、再生可能エネルギーを購入したとみなせる仕組みとなっている。今回のユニリーバ・ジャパンもこの仕組みを活用して、100%再生可能エネルギーの活用を実現したという。

「競争力の源泉にするために環境問題に取り組んでいるわけではない」

 グリーン電量証書の仕組みについて、ユニリーバ・ジャパンのグアルネリ氏は「非常によい仕組みだと思った100%発電ソースが保障されており信頼性を確保している点がすばらしい。工場などでは直接発電するようなことも可能だが、カフェや小さなオフィスなどでは実際に発電することは現実的ではない。こういう状況をカバーしてくれた仕組みだ」と述べている。

 それでは、なぜ、いち早く100%再生可能エネルギー化を進めようと考えたのだろうか。

photo 「持続可能性のあるビジネスには持続可能性のある環境が必要」と述べるグアルネリ氏

 グアルネリ氏は「もちろんグローバルでの目標というのもあるが、基本的には持続可能社会の実現もビジネスと両立させ、継続性のあるような形で活動していこうという動きが強まってきている。ビジネスとサステナビリティは密接に関わっている。環境が破壊されてはビジネスは成立しなくなる。ビジネスを持続可能性のあるものにするためには、当然ながら環境を持続可能性のあるものにしていかなければならない。そのためには企業がサステナビリティにつながる活動に参加するのは当然のことといえる」と話す。

 また、今回100%再生可能エネルギー化を進めたことをどうビジネス面で生かすかという点については「基本的にはブランドコミュニケーションの形で使っていく。ただし、注意しておきたいのは、これを競争力の源泉だとは考えていないということだ。そのため競合企業が同様の仕組みで再生可能エネルギー化を進めたとしても歓迎するだろう。ユニリーバという企業のブランドや、方向性において、地球環境に貢献していくことというのが重要だから取り組んだということで、他社より優位に立つためにこれを使うつもりはない」とグアルネリ氏は強調する。

 これを受けて牛山氏は「一種の企業としての“生き様”に近いかもしれない。日本の企業はすぐに評価を求めるが倫理観に欠ける企業も増えてきたように思う。企業理念や倫理として行動に示すことが、後に消費者の行動に影響を与える」と述べている。

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