電力会社の業績悪化が第1四半期から始まった、7社が営業利益を減らす:電力供給サービス(2/2 ページ)
本業のもうけを示す営業利益を見ると、東京電力は前年から846億円も減少した。売上高と同じように上位4社の減益ぶりが目立つ。関西電力は238億円、中部電力は473億円、東北電力も207億円の減益になっている。東京電力に次いで大きな減益に見舞われた中部電力では、燃料費調整額が生み出す差益が前年と比べて500億円も減った(図4)。
図4 中部電力の燃料費調整額の期ずれによる差益。出典:中部電力
こうした厳しい状況の中でも、大幅な増益を記録したのが九州電力だ。前年から167億円の増益を果たした。他社と同様に燃料費調整額による売上高の減少分が424億円あったものの、燃料費が617億円も減って利益を押し上げた(図5)。そのうち原子力発電所の再稼働による燃料費の減少分が265億円にのぼる。
図5 九州電力の収益と費用の内訳(個別決算、画像をクリックすると拡大)。CIF:運賃・保険料を含む燃料輸入価格。出典:九州電力
もし原子力発電所を再稼働できていなければ、九州電力も減益になっていた可能性が大きい。周辺地域の住民から運転停止を求められても、簡単に応じられない理由がここにある。結局のところ電力会社の収益は原子力発電所の再稼働と燃料の輸入価格で決まる構造は変わらない。
- 東京電力が大幅な減収減益に、売上高が18%減る
東京電力の分社化後で初めての四半期決算は厳しい内容だ。売上高が前年から2866億円も減り、利益は4割近く落ち込んだ。販売電力量が減少したことに加えて、燃料の輸入価格の低下が売上高と利益の両面に影響した。黒字は確保するものの、今後も減収減益が続く可能性は大きい。
- いよいよ始まった電力の小売全面自由化 300社が料金とサービスを競う
2016年4月1日は日本のエネルギー産業にとって大きな節目になる。家庭向けの電力小売を自由化するのと同時に、従来の電力会社を頂点とする市場構造の転換が始まるからだ。電力会社を含めて300社を超える事業者が料金とサービスの両面で競争して需要家にメリットをもたらす。
- 電気料金の燃料費調整額が低下、過去1年間に標準家庭で月額735円も
原油やLNGの輸入価格が下落して、為替レートも円高・ドル安に動いたため、電気料金に上乗せする燃料費調整額が大幅に下がっている。全国10地域の電力会社の平均で1年間に1kWhあたり2.45円も安くなった。標準的な家庭で月額735円の値下げに相当する。当面は下がり続ける見通しだ。
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