自治体の動きに要注目、FITだけじゃないソーラーシェアリングの支援制度ソーラーシェアリング入門(11)(2/2 ページ)

» 2019年02月19日 07時00分 公開
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神奈川県も独自施策を展開

 その他にも、神奈川県では県庁がソーラーシェアリングの導入促進のために「かながわソーラーシェアリングバンク」と称して、ソーラーシェアリングの実施に必要な諸手続から設備の設置工事までをワンストップで提供するサービスのプランを公表しました。

 この神奈川県のサービスは、FIT制度を利用するための事業計画認定申請や、電力会社との受給契約の締結だけでなく、農地の一時転用許可の取得から事業開始後の国や農業委員会に対する各種報告の支援まで、ソーラーシェアリング事業に必要なサービスを事業者が県に登録し、県のWebサイトにその内容や問い合わせ先が公表されます。現在、第1弾として8事業者のプランが掲載されていますが、各プランについて県のWebサイト上では「あくまで標準モデルとしてのプランを登録・公表するもので、登録されたプランを申請した事業者を優良事業者として認定・推薦するものではありません」としています。ですから、実際にプランの優劣や自身にどのプランが適しているかは、利用者が自ら判断する必要があります。

 私の経験からすると、この手の行政主導のサービス・事業者紹介は単独では効果を発揮しません。設備設置への補助金までは不要ですが、利子補給などのある融資メニューを地域の金融機関と連携して用意したり、このサービスを利用すると一時転用許可の申請がスムーズに進んだりするといった仕組みまで用意できなければ、導入促進の効果は低いでしょう。

 また、行政評価の観点からすれば、県としてのソーラーシェアリング導入目標を明確に定めた上で、この支援サービスについて何件の利用を目指すなどの基準を示すことも重要です。都道府県は多くの場合でソーラーシェアリング導入の一時転用許可に対する許可権を有していますから、民間事業者だけに頼るのではなく、その立場を生かして、もっと前向きな支援制度を設けることが有効な普及支援につながるでしょう。

普及には「長期的な目線の」支援策が欠かせない

 この他に、直接の補助制度というわけではありませんが、農林水産省による「営農型太陽光発電 取組ガイド」には、支援施策として日本政策金融公庫の「スーパーL資金」が利用できることや、農業信用保証保険制度が利用できるといったことが記載されています。スーパーL資金は認定農業者向けの長期低利融資制度で、通常の太陽光発電に関する融資よりも有利な条件での資金調達が可能です。

 ソーラーシェアリングが普及し発電事業としての事業性を備えていく中で、行政による補助のあり方も設備投資資金を補助する旧来型の支援から、長期的な事業の安定運用に資する利子補給や行政計画における定量的な導入目標の設定などに移り変わっていくことが必要です。一方で、一時転用許可に関する基準のブレなどが事業のハードルになっている部分もあり、そういったルールの明確化を図ることも、普及の支援につながることでしょう。

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