脱炭素燃料として期待の「水素・アンモニア」、課題のサプライチェーン構築に向けた支援策とは?エネルギー管理(3/3 ページ)

» 2022年09月08日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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「グレー」水素・アンモニアの支援の在り方

 水素・アンモニアはライフサイクルCO2排出量低減が求められるものの、水素・アンモニアを新たに事業として開始し、サプライチェーンを構築するためには、その初期段階においては「グレー」(化石燃料由来でCO2除去を伴わない)水素・アンモニアの使用が否定されるものではない。

 ただし支援措置の対象としては、将来的なクリーン化(脱炭素化・低炭素化)が確約されたグレー水素・アンモニアに限定する。またクリーン化までの移行期間を設定し、支援期間に上限を設けることにより、速やかな移行を求めることとする。

図4.グレー水素等のクリーン化促進 出所:水素政策小委員会

◎ 商用開始時からクリーン水素・アンモニア

〇 商用開始時はグレー ⇒ クリーン水素・アンモニアに移行

※グレー支援時期には上限を設ける等、速やかな移行を求める措置を併せて整備。

× 商用開始時よりグレーで、クリーンへの移行未定

× 商用開始時よりグレーで、クリーンへの移行が支援期間上限を超える場合

 なおグレー水素・アンモニアに対する支援策は、CCS等の技術が未確立である黎明期の経過措置として位置付けられることから、将来的にはグレー水素・アンモニアに対する支援策そのものが廃止される。

 また、現時点において商用開始当初からクリーン水素・アンモニアを供給する事業者に対しては、何らかの優遇措置を講じることが検討される。

水素・アンモニア拠点形成の支援

 水素・アンモニア等の脱炭素燃料を社会に定着させるためには、個々の案件支援だけでなく、国内各地での拠点形成が不可欠となる。先行する諸外国において、米国では「水素ハブ」、英国では「低炭素クラスター」といったスキームが進められている。

 国内では水素・アンモニア拠点の例として、コンビナート等の「多産業集積型」や、「地域再エネ生産型」、「大規模発電利用型」に類型化されている。

 拠点形成においては、大規模需要の創出と効率的なサプライチェーン構築を行うために、水素・アンモニアの利用拡大に資する設備を支援対象とすることが重要である。

 よって共有インフラの対象は、サプライチェーンの軸となり、周辺の需要家が支援の恩恵を受ける水素・アンモニアの受入・貯蔵・配送・脱水素設備、およびこれらに付随するCO2の回収・貯蔵・配送に用いる設備とする。

図5.水素等の拠点形成に必要なインフラ・設備の利用形態 出所:水素政策小委員会

 拠点形成への支援にあたっては、効率的な実施の観点から、①拠点整備計画策定のための実現可能性調査(FS)、②詳細設計(FEED)、③インフラ整備の3つのフェーズに区分したうえで、事業の継続可否やフェーズの移行可否を判断し、各段階で有望なものに重点的に支援を行う仕組みとする。

 また、拠点形成時に考慮すべき前提条件としては、関係者の合意に基づき拠点形成がなされ、支援終了後も継続的に運用されることや、水素・アンモニアの導入による地域経済への貢献、一定程度のCO2削減量を見込むこと、などが求められる。

 水素・アンモニアの拠点形成は、一過性のイベントに終わらせることなく、社会インフラの転換という長期的かつ経済自律的な事業とすることが求められる。

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