現在、高性能二次電池分野では、液系のリチウムイオン電池(液系LIB)が主流であるが、さらなる高性能化等を目指して、各国で次世代二次電池の研究開発が進められている。
これまで日本では、次世代二次電池の一つである「全固体リチウムイオン蓄電池」の技術開発に集中投資することが基本戦略とされていた。
他方、近年は中・韓企業が液系LIB への大規模投資により、コスト面だけでなく技術面でも日本に追いつき、国際競争力や市場シェアで逆転したことは上述のとおりであり、液系LIBが蓄電池の当面の主要技術として拡大すると見込まれている。
また日本の蓄電池産業界は国内志向であり、グローバル市場の成長を十分に取り込めてこなかったことが指摘されており、このままでは全固体LIBの実用化に至る前に、日本企業は蓄電池市場から撤退する可能性すら懸念されている。
これら従来戦略の反省を踏まえ、官民協議会では新たな「蓄電池産業戦略」と3つの目標を示している。
第1目標としては、液系LIBの国内製造基盤の確立を目指し、遅くとも2030年までに、蓄電池・材料の国内製造基盤150GWh/年を確立する。
この実現のため、民間の取り組みのみに委ねることなく、政府も上流資源の確保を含めた大規模投資への支援を行うこととする。電池サプライチェーン協議会の試算によれば、国内150GWh達成に向けては、部材製造で1.3兆円、電池製造で2.1兆円、合計3.4兆円の官民投資が必要と考えられている。
第2の目標としては、蓄電池製造に不可欠な上流鉱物資源のグローバル市場での購買力確保や、標準化・国際的なルール形成での影響力確保等の観点から、2030年に日本企業全体でグローバル市場において600GWh/年の製造能力を確保する。
第3の目標としては、次世代二次電池市場の獲得に向けた研究開発・製造技術の維持向上に努め、2030年頃に全固体LIBの本格実用化を目指す。
グリーンイノベーション基金において、次世代蓄電池の研究開発に対しては、1,205億円が措置されている。
同時に、人材育成や国内需要拡大の環境整備、リユース・リサイクル、再エネ電源による電力供給の拡大と電力コスト負担の抑制といった国内環境整備も進めていく。
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