新規の鉱物資源消費量を抑制するためには、既存の蓄電池のリユース・リサイクルを進めることも有益である。電池サプライチェーン協議会の試算によれば、中長期的(2040年頃)には、国内蓄電池生産量の半数以上が、リサイクル原料によって賄われると想定されている。
経済産業省の調査によれば、現在、自動車解体後の蓄電池の流通経路として、約半数がリユースされ、約半数が処理されていることが明らかとなった。
蓄電池の多くが国内から流出することは、リサイクル資源のボリューム不足により、コスト高が続くことを意味するため、使用済電池の回収力を高めていくことが課題である。
定置用蓄電池のうち住宅用LIBシステムについては、メーカーが自主的な取組みとして、環境省から広域認定制度の認定を受けている。広域認定制度とは、製造事業者等が自社製品で廃棄物になったものを広域的に回収する際に、廃棄物処理法上、必要な地方公共団体ごとの許可を不要とする特例制度である。
今後は蓄電システム廃棄台数が増加することから、回収作業の効率性やユーザーの利便性を重視し、業界共同での回収スキームを構築する予定である。
また今後は業界全体でリサイクルコスト低減に向けたリサイクルしやすい蓄電池の設計製造を進め、リチウム70%、ニッケル95%、コバルト95%以上を回収可能なリサイクル技術を開発することを目標としている。蓄電池のリサイクル関連技術開発に対しては、グリーンイノベーション基金から、1,510億円が助成される。
なお欧州では「バッテリー規則」により、
などが課される予定であり、日本企業もこの規則の順守が必須となる。
従来、蓄電池メーカーは各社で必要な人材を育成してきたが、2030年での国内150GWh、グローバル600GWhを目指すにあたっては、人材不足が懸念されている。
そこで国は蓄電池製造に係る人材として、技能系人材を1.8万人、技術系人材を0.4万人の合計2.2万人を、また材料なども含めた蓄電池サプライチェーン全体では、合計3万人を育成・確保することを目指すとしている。
この具体策の一つとして、「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」が2022年8月末に発足した。
コンソーシアムでは産学官が一体となり、工業高校や高専等において、蓄電池に係る教育カリキュラムを導入することや、産業技術総合研究所関西センターにおいて、高度分析装置や電池製造設備など実機も活用した教育プログラムを実施する予定としている。
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