EUの「バッテリー規則」が、蓄電池の製造・廃棄時の温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント:CFP)に対する規制のほか、環境・人権等に配慮した責任ある材料調達(デュー・ディリジェンス)、リサイクル等を義務付けているように、世界的に蓄電池のサステナビリティ確保が求められている。
経済産業省では、蓄電池産業の事業継続においてサステナビリティの確保が必須条件であるとして、「1.カーボンフットプリント(CFP)」「2.人権・環境デュー・ディリジェンス」「3.リユース・リサイクル」および、これらを実施するための「4.データ流通の仕組み」について検討を行ってきた。
現在CFPは各社で算定方法が異なる為、上流に遡るほど算定方法が複数存在し、サプライチェーン全体で、膨大な作業工数が発生している。
このため経済産業省では今年度、CFP算定や人権・環境デュー・ディリジェンス方法等の統一化に向けた試行事業を行い、ルールの具体化に向けて取り組む予定である。
蓄電池の安全性は日本企業の強みの一つとされており、今後の蓄電池大量導入に対する社会的受容性を高めるためにも、安全性の確保は前提条件となる。
日本はこれまでも、類焼試験など定置用大型蓄電システムの安全性規格(IEC 62933-5-2)などを主導提案し、複数の国際規格を作成、発行してきた。
今後は、リユース電池の活用と安全性維持の必要性が高まることから、電池ライフサイクル管理による電池の安全性維持等に関する国際規格の提案、策定を進め、日本企業の優位性を生かしたグローバルスタンダードの形成を図るとしている。
蓄電池や電池材料の製造工程においては多量の電力を消費するが、図8のように欧州では「バッテリー規則」により、CFPの大きい製品は輸出が出来なくなる。
よって、変動再エネ電源の大量導入には蓄電池が不可欠であるのと同時に、国内で蓄電池の製造拠点を維持するためには、安価でCO2排出の少ない再エネ電力を供給することが、国内蓄電池産業の環境整備の一つとして、今後さらに重要となる。
蓄電池は、すでに欧米中韓の世界各国の企業や政府が大規模な投資戦略を掲げている。例えば韓国では、「K-バッテリー発展戦略」のもと、2030年に2次電池の世界トップを目指すとして、韓国電池メーカー3社と素材・部品企業は、2030年までにR&Dと設備投資に合計3.9兆円を投資する方針を表明している。
韓国各社の投資計画の例として、LGエネルギーソリューション社では250GWh(2023年)、SKイノベーション社では500GWh(2030年)の大半は、国外での工場建設が計画されている。
各国の蓄電池産業戦略は自ずと似通ったものとなるが、日本の蓄電池産業の生き残りのためには、大規模投資が不可避となっている。
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