グリーン製品市場を創出へ、経産省が「カーボンフットプリント」の多面的活用を検討開始法制度・規制(1/4 ページ)

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素・低炭素商品(グリーン製品)の普及拡大が期待されている。こうしたグリーン製品の普及に向けて、政府は当該製品の製造・流通におけるCO2排出量を算定する「カーボンフットプリント」の活用に関する検討を開始した。

» 2022年10月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルが実現した社会においては、一般消費者は脱炭素・低炭素商品(グリーン製品)を選択・購入していることが想定される。

 このためには、炭素価格を商品価格に内部化する炭素税等の「経済的手法」を用いると同時に、炭素排出量を表示する「情報的手法」を併用することも有効であると考えられる。

 通常あらゆる商品やサービスは、その原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して、一定の温室効果ガス(GHG)を排出している。

 LCA(ライフサイクルアセスメント)手法を活用し、当該商品等のCO2排出量を算定したものをカーボンフットプリント(CFP:Carbon Footprint of Products)と呼び、そのCFPをラベルなどのかたちで商品等に分かりやすく表示する仕組みが、CFPプログラムと呼ばれる。

図1.CFPプログラムのイメージ 出所:CFPプログラム

 近年企業は、事業活動に伴う自社のGHG排出量の削減だけでなく、中間製品・最終商品いずれであっても、自社が製造販売する製品の低炭素化・脱炭素化が求められている。

 ここで自社製品のCFPを算定・公開するためには、自社の取り組みだけでなく、サプライチェーン(SC)全体での、CFPを把握することが不可欠となる。

 このため経済産業省は、グリーン製品が選択される市場を創出し日本企業の成長に繋げていくことを目的として、新たに「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会」(以下、CFP検討会)を設置し、検討を開始した。

世界的なCFPの活用の広がり

 国内でもCFPプログラム等として試行・実運用されてきたCFPであるが、海外では欧米諸国を中心に、幅広くCFPが活用されている。

 従来のCFPの多くが、一般消費者向け製品のCO2「見える化」ラベルとして扱われてきたのに対して、近年ではB2Bの産業中間材や公共調達においても、低炭素・脱炭素製品を調達する条件としてCFPが用いられるなど、CFPの機能・役割にも変化が見えつつある。

 例えば、別稿(日本の蓄電池産業の課題と展望――政府が公表した「蓄電池産業戦略」を読み解く)で報告したように、EUの「バッテリー規則案」では、2024年以降はバッテリーのCFP表示義務が課され、2027年以降はCFPが一定以上の電池の市場アクセスが制限されることとなる。

 このため日本でも蓄電池を最優先アイテムとして、今年度内のCFP算定試行事業の開始や、制度的枠組みの構築が予定されている。

図2.蓄電池 CFP算定の対象範囲 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 また米国では「Buy Clean」プロジェクトの元、公共調達においてEPD(Environmental Products Declarations:環境製品宣言)の取得と同時に、一定のCFP以下の建設資材の使用を義務付けているほか、電子機器公共調達においては、LCA実施やCFP開示等がオプション基準として加点される。

 民間分野の事例として、アップルやアマゾン等のグローバル企業が低炭素・脱炭素商品の購入をコミットする「First Movers Coalition(FMC)」においては、複数の製品分野で、調達の基準にCFPの数値が設定されている。

表1.First Movers Coalition(FMC)購入商品の基準例 出所:CFP算定・検証等に関する検討会
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