23年度の容量市場追加オークションは「開催見送り」、その背景と要因とは?法制度・規制(4/5 ページ)

» 2023年05月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

エリア別の追加オークション開催判断

 以上は全国分の追加オークション開催判断であったが、追加オークションはさらにエリア別・月別の供給信頼度を確認したうえで、エリア別の開催判断を行うことしている。

 広域機関の算定によれば、仮にバイオマス混焼石炭火力の供給力を考慮しない場合、すべてのエリアにおいて一部の月で、供給信頼度基準を超過する(停電リスクが高い)状況となっている。

 また、バイオマス混焼石炭火力の供給力を、仮に2025年度の織り込み量である553万kWと仮定して試算した場合であっても、北海道・東京・九州エリアにおいて、供給信頼度基準を超過すると試算されている(表5のオレンジ色の月・年で基準を超過)。

表5.各エリアの供給信頼度(バイオマス混焼石炭火力の供給力を考慮) 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

 これら3エリアで、供給信頼度基準を満たすために必要となる供給力のギャップは、北海道で40〜50万kW、東京で250〜300万kW、九州で10〜15万kW程度であると試算されている。

 そこで、最新の供給計画等を用いて、現状、容量市場で確保されていない(未応札や非落札となった)ものの、供給力として見込み得る電源をエリア別に積み上げたところ、東京・九州エリアでは、不足分相当の供給力が存在することが確認された。ただし北海道エリアでは、個別電源の積み上げによっても、なお10〜20万kW程度の不足が生じることとなる。

 他方、2023年度供給計画によれば、北海道エリアも含めた全エリアにおいて、2024年度の供給信頼度評価は基準を満たしていることや、予備率は全ての月で8%を上回っていることが確認されている。容量市場と供給計画では、供給力の評価方法に幾つか違いがあるため、このような差分が生じることは不可避であるが、本稿ではその詳細は割愛する。

表6.2024年度 各エリア予備率(連系線活用後&工事計画書提出電源加算後) 出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 このため、制度検討作業部会では、北海道の供給力不足量は全国の目標調達量に比べてわずかであり、当該エリアの供給信頼度が極端に低くなっているとまでは言えないとして、社会コストの増大を抑制する観点から、いずれのエリアにおいても追加オークションを行わないことと判断された。

 なお、仮に予定外の電源退出等により状況に変化が生じ、供給力不足が見込まれることになった場合、kW公募の実施を含めた需給対策が講じられることとなる。

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