追加オークション(調達オークション)を開催する領域にありながら、実際には追加オークションを開催しないと判断された理由は、容量市場の枠外にあるバイオマス混焼石炭火力の供給力の存在である。
バイオマス混焼石炭火力は、FIT制度からの支払いを受けるか、もしくはFIT制度の適用を受けずに容量市場に応札するかを選択できるため、オークション需要曲線の公表時点ではこの供給力の扱いが確定しない。このため、容量市場に応札しない混焼電源の非FIT分(石炭分)は目標調達量に織り込まれていない。(※2019年度末までにFIT買取を開始している電源は、FIT分のみが「FIT電源等の期待容量」に計上されている)
なお容量市場制度の変更により、2021年度メインオークション(実需給2025年度)以降は、バイオマス混焼の石炭分は、約定処理の中で供給力として織り込むことにより、目標調達量から事後的に控除されている。
このため、2023年度に追加オークションが開催された場合、オークション実施後に、応札されていない分を確認して事後的に織り込む供給力として反映して供給曲線を作成し(図5の青色部分)、約定処理を行うこととしている。
なお、すでに開催済みの2021年度(実需給2025年度)・2022年度(実需給2026年度)メインオークションにおいては、応札後に織り込むバイオマス混焼石炭火力の供給力は、2025年度で553万kW、2026年度で632万kWと公表されている。
来年度に実需給が迫っている現段階において、バイオマス混焼石炭火力がFITの適用を辞めて容量市場に入札することは、実際には想定しにくい。このため、制度検討作業部会では、当該バイオマス混焼石炭火力分については、他のFIT分と同様に、あらかじめ供給曲線に組み込んだ上で追加オークションの開催を判断することとした。
この場合、「確保されている供給力」17,941万kWに500〜600万kW程度のバイオマス混焼石炭火力を加えるならば、星印☆は大きく右方向に移動し、「需給状況を踏まえて追加オークション開催を判断」する領域に位置することとなる。
そのうえで、追加オークション開催による社会コストの増大を抑制する観点や、後述する予備率などを総合的に勘案し、2024年度分の追加オークションは実施しないことと判断された。
なお、仮に追加オークションが開催される場合、需要曲線と供給曲線はかなり低い位置で交差することにより、約定価格は低いものになると予想される。
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