国は、容量市場制度を導入するに理由として、「あらかじめ必要な供給力を確実に確保する」という目的を効率的に達成する手段であるということを繰り返し説明してきた。
ところが慢性的な供給力不足を背景に、2021年度冬季に初めて実施された「追加供給力公募(kW公募)」は、不測の事態に備えた一種の「社会的保険」であることを名目として、大きな社会的費用を掛けながら、繰り返し実施されてきた。容量市場の受け渡し開始前であるため、これ自体はやむを得ない面もあるものの、kW公募の託送回収費用は約467億円、kWh公募の託送回収費用は約933億円、合計1,400億円に上る。
これは、2020年度(実需給2024年度)メインオークションの経過措置を踏まえた約定総額1兆5,987億円の約9%に相当する規模である。
容量市場は「社会的保険」としてあらかじめ開催することにより、kW公募のような、緊急的・割高な供給力確保による国民負担の増大を抑制することが、本来目的の一つであったと考えられる。
今回、少なくとも北海道エリアでは、供給信頼度基準を超過することが明らかとなったにも関わらず、本来の容量市場の目的と費用効率性を十分に比較衡量することなく、追加オークションの開催は見送りされることとなった。
必要十分な供給力の確保とその費用負担の在り方は、発電・小売・送配電などすべての事業者や需要家に大きな影響を与えるものである。どのようなときに、具体的にどのような基準値を用いて追加オークション開催の判断を行うのか、そのリスクも含め、予見性・透明性のある制度運用が行われることを期待する。
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