再エネ出力制御の低減へ新施策 「新設火力」の最低出力を30%に引き下げ法制度・規制(4/5 ページ)

» 2023年06月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

再エネ出力制御低減に向けた追加施策を導入へ

 現行の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」や「系統連系技術要件」では、新設の火力・バイオマス発電の最低出力については「50%以下」とすることが求められている。

 これに対して、最新鋭のLNGコンバインドサイクルにおいては、最低出力が25%程度のものも存在する。

 このため「新設火力」については、系統連系技術要件ガイドラインの改定により、最低出力を現行の50%から30%に引き下げることとする。なお、これまで系統WGでは、最低出力の引き下げ適用を2025年度中と予定していたが、これを1年早め、2024年度中の適用を目指すこととする。

 他方、バイオマスについては、50%未満への最低出力の引下げは、ボイラーの安定燃焼に著しく悪影響を与える可能性が極めて高く、環境に悪影響を与える物質の排出も懸念される。

 このため新設バイオマス電源については、将来的には火力と同等の水準を目指すものの、ガイドラインでは現行の最低出力50%を維持しつつ、各電源の個別事情を踏まえ、最低出力の引下げに向けた発電事業者の自主的な努力を求めていくこととされた。

既設火力等の最低出力引下げ

 系統連系技術要件ガイドラインの改定は、既設電源に対して遡及的に適用されることはなく、新たな最低出力の基準は設備のリプレース時等にのみ適用される。他方、火力電源の新設はそれほど多いものではなく、系統に連系する電源の大半は既設の電源であるため、本来は既設火力に対する対策強化が望まれる。

 このため、ペナルティ等は設けられないものの、既設火力に対しても、基本的に新設の場合と同様の基準(30%)の順守を求めることとする。

 また、再エネの出力制御の低減が喫緊の課題であることに鑑み、特に大規模な発電事業者に対しては、ガイドラインの2024年度改定を待つことなく、最低出力基準30%を順守するよう求めていく。

電源III 火力・バイオマスの情報公表

 現在、広域機関により行われている出力制御の事後検証では、電源I・II(あらかじめ一般送配電事業者が確保した調整電源)について、再エネ出力制御の発生時に稼働が想定された電源の「発電所名」「最低出力値」「前日計画値」「前日計画と最低出力に差異があった場合の理由」が公表されている。

 今年度以降、電源III火力・バイオマスについても同様の形式で、年2回程度、情報を公表することとする。

表5.電源III 火力・バイオマスの公表情報イメージ 出典:系統WG

広域的な出力制御の運用

 エリア内で電力の供給が需要を上回ると見込まれる場合、優先給電ルールに基づき、まず電源I・II、電源IIIの出力が引き下げられる。それでもなお、下げ調整力が不足する場合、広域機関を通じて、他エリアに受電を依頼(=長周期広域周波数調整)している。

 現在の運用では、受電エリアでの出力制御は電源I・IIのみが対象であり、電源IIIは稼働し続けるため、送電エリアからの余剰電力受け入れ可能量が、相対的に小さなものとなっている。これに伴い、地域間連系線の空き容量が最大限活用されないケースも生じている。

 このため今後は、受電エリアの電源IIIについても出力制御を行うこととして、地域間連系線の最大限の活用を目指すこととする。これを実現するためには、事業者間の契約(運用申合せ書)を見直すとともに、エリア間の精算単価に差がある場合の一般送配電事業者間の精算方法についても検討が必要となるため、2024年度中を目指して契約の見直しを行うこととする。

 なお、再エネの出力制御の低減が喫緊の課題であることに鑑み、特に大規模な電源III発電事業者に対しては、契約の見直しを待つことなく、他エリアの出力制御時には出力を引き下げるよう、協力を求めていくこととする。

 さらに、受電エリアの電源III出力制御を行っても下げ代不足が解消できない状況が生じ得ることを踏まえ、受電エリアの専焼バイオマスや太陽光・風力を出力制御することについても、今後検討を行う予定である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.