経済産業省が発電・小売電気事業者の電気販売・調達の状況や、契約に関する課題・ニーズ等の実態把握を目的としたアンケート調査を実施。契約期間や販売メニューなどの傾向が明らかとなった。
電気事業において、電気の安定供給と低廉な料金はいずれも重要である。このため資源エネルギー庁では、発電事業者と小売電気事業者の間の、長期から短期の取り引きの在り方や、そのために必要な市場・取引環境の整備に関する施策を検討している。
このたび、事業者間の電気の販売・調達の状況や、取り引きの課題・ニーズ等の実態把握を目的として、「競争と安定を両立する市場・取引環境の整備のためのアンケート調査」が実施され、「電力・ガス基本政策小委員会」の第62回会合において、その結果が公表された。
アンケート対象は、発電事業者では発電容量(kWベース)上位の67社(日本全体の発電容量の約9割をカバー)であるが、回答数は30社であった。また小売電気事業者では、すべての事業者が対象である。具体的な対象事業者数は公開されていないが、最新の2023年度供給計画の提出事業者数は688社である。小売電気事業者からの回答数は206社であった。
なお、このアンケートは2022年度末(2023年2月14日〜3月17日)に実施されたため、取引実績の回答は2021年度の実績がベースであることに留意願いたい。本稿の前半では発電事業者に対するアンケート結果を報告し、後半では小売電気事業者に対するアンケート結果を報告する。
図1は、発電事業者の小売電気事業者等に対する契約期間別契約実績(kWhベース)について、各社の2021年度の発電実績(kWhベース)で加重平均した結果である。kWhベースで加重平均することにより、回答件数よりも、量の面で実態を表していると考えられる。
本アンケート調査は、旧一般電気事業者と新電力の双方を対象としているため、回答選択肢の「社内・グループ内事業者向け」の項目は、旧一電の発電部門から旧一電小売部門への取り引きを意味していると推測され、「グループ外の事業者向け」の多くは、旧一電発電部門から新電力への卸取引を意味すると推測される。
社内・グループ内事業者向け、社外向けのいずれも、「契約期間1年」が最多となっている。ただし今回のアンケートでは、売主・買主双方で異議がなければ契約期間が自動延長される契約の場合、自動延長が行われないものと見なして計上(契約期間が1年の契約に、自動延長を行う条項が入っている場合、契約期間は1年として計上)するため、過去すでに3回自動延長をしていたとしても、契約期間は4年でなく、1年として計上されている。
また、契約期間の実績(現状)に対して、発電事業者が希望する契約期間ポートフォリオについては、10年以上の長期契約の比率を増やしたい、との回答が多数であった。
本アンケートの調査票には、「より長期の契約期間の場合、価格は安定的であり、より短期の契約期間の場合、価格は変動的であるということを前提」として回答を求めるとの一文が記されている。確かに、スポット市場価格の変動性が高いことは事実であるが、発電事業のリスクや採算性という観点では、長期契約は「安定的」というよりも「固定的」であることによる、メリット・デメリットの双方を把握するアンケート調査が必要と考えられる。
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