実態調査で見えた電力卸取引の現状、契約期間や販売メニューの傾向が明らかに法制度・規制(2/5 ページ)

» 2023年06月15日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

発電ー小売間の長期契約の有無とニーズ

 本アンケートでは、1年を超える期間の契約を「長期契約」と呼び、これを「1年超〜3年未満」、「3年以上〜5年未満」、「5年以上〜10年未満」、「10年以上」の4つに区分して調査している。

 小売電気事業者との長期契約の実績の有無について、その契約期間ごとの回答結果(複数回答可)が図3である。図3では参考として、短期契約の有無についても表示している。

 また、図3の折れ線(菱形マーカー)は、小売電気事業者と長期契約を結ぶニーズの有無について尋ねたものであり、どの契約期間の長さにおいても、ニーズは実績を上回る結果となった。

図3.小売電気事業者との長期契約等の実績有無 出典:電力・ガス基本政策小委員会を基に筆者作成

 図3のように、「1年未満」から「10年以上」の6つの期間区分で捉えた場合、1つの発電事業者は平均的には2つ程度(2.16件)しか、契約期間プランを提供していない(契約締結に至っていない)ことが分かる。

 長期契約について発電事業者からは、

  • 契約期間が長期になればなるほど、個別の条件(電源の想定外のトラブルや燃料価格等の発電費用の不確実性、通告変更等)について個別に調整して合意しておくことが重要
  • 小売電気事業者の事業撤退が頻繁に発生する状況下にあっては、取引先が長期間の取り引きを確実に履行できるかについて、慎重な判断が必要。与信力のある事業者以外との契約は非常に難しい

 などの意見が寄せられており、長期契約の締結には一定の困難が伴うことが示されている。とはいえ、1年や1年未満の契約を締結する発電事業者が特に多いという状況でもない。

 短期契約について発電事業者からは、

  • 契約の自動延長条項があり、かつ、延長が見込まれる案件でなければ、投資予見性が低く、契約は締結しづらい
  • 契約期間が短期になればなるほど、販売価格は時々の市況に左右されやすくなることから、固定費の回収が不十分となるリスクについて留意が必要

などの意見が寄せられており、ここでは逆に、「十分に長期の契約期間でない」ことが、短期契約締結のネックになっていることが示されている

 代表的な「1年契約」において、数量や価格の条件別の契約実績(kWhベース)について、発電事業者各社の回答を単純平均した結果は図4のとおりである。

図4.1年契約 数量や価格条件別の契約実績 出典:電力・ガス基本政策小委員会

 1年契約では、柔軟性の高い「変動数量、燃料費調整単価等に連動した変動価格」の回答が最多であったが、どの程度の変動が許容される契約であるかは不明である。

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