電力の「新・基礎排出係数」を創出へ、非化石証書等の取引を反映可能に法制度・規制(2/6 ページ)

» 2023年07月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

現行制度の基礎排出量・調整後排出量

 SHK制度では、前年度(HFC等は前年)の「基礎排出量」と「調整後排出量」を算定し、国に報告することを事業者に義務付けている。「基礎排出量」とは、自らの事業活動に伴い排出したCO2・CH4・N2O・HFCs・PFCs・SF6・NF3の量であり、「調整後排出量」は、「基礎排出量」を基本とし、クレジット等により調整したものである。

 ここでは、製造業工場など、電気事業者ではない者をイメージしていただきたい。他者から供給された電気・熱を使用する際、他者(主に電気事業者)が発電等する際に排出したCO2を、電気等の購入者(需要家)が間接的に排出したものとみなし、需要家自らのエネルギー起源CO2排出量として算定する。

図3.現行制度の基礎排出量・調整後排出量 出典:SHK制度算定方法検討会

 「調整後」排出量ではその名のとおり、クレジットや証書、つまり他者による削減・吸収の取り組みを環境価値として購入し、自社の排出量を「調整」することが可能であるので、イメージしやすい(※ ただし、非化石電源二酸化炭素削減相当量は、電気事業者から小売供給された電気の使用に伴って発生する二酸化炭素の排出量が控除上限)。

 また「基礎排出量」においても、実測等の算定方法を認めるほか、外部から購入する電力については、当該電気事業者の排出係数(排出量)を使用することとしている。これにより、需要家側事業者が、排出係数の低い電気事業者を選択すること、つまり、事業者の削減努力を促す仕組みとしている。

図4.事業者の削減努力を反映するための仕組み 出典:SHK制度算定方法検討会

 電気事業者から供給された電気の、電源等による違いを排出係数に反映するため、電気事業者ごとに排出係数を設定している。後述するように、調整後排出量の算定において調整後排出係数を使用するのに対して、基礎排出量では基礎排出係数を使用することの是非が論点とされてきた。

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