いずれにせよ、SHK制度の目的である「自主的な取り組み、削減努力」を促進するという観点から、検討会では、電力需要家の声を反映し、電気の基礎排出係数の変更について検討を行った。
ただし、現在の「基礎排出係数」は国や地方自治体の様々な制度等で使用されており、仮に基礎排出係数そのものを見直した場合は、広範囲にわたり影響が生じることが予想される。
よって、この解決策として考案されたのが、電力では「従来の基礎排出係数」と「調整後排出係数」に加え、第三の「新・基礎排出係数」を創出する、という方法である。
電力の新基礎排出係数では、従来の基礎CO2排出量に、「抜け殻電気」分に相当する排出量を加算し、非化石証書やグリーン電力証書、再エネ電力由来J-クレジットの取引を反映(減算)させるものである。
これにより、小売電気事業者は「新・基礎排出係数」において、メニュー別に複数の基礎排出係数を設けることが想定される。
なお事務局案では、小売電気事業者の「新・基礎排出係数」を用いるだけでなく、需要家が直接調達した非化石証書・グリーン電力証書・再エネ電力由来J-クレジットについても、電気由来CO2排出量の算定に反映させる、と説明している。
これらの改定案を踏まえた、需要家側での基礎排出量の算定式事務局案は、図7のとおりである。ただしこの図の場合、「非化石電源二酸化炭素削減相当量」等が、エネルギー起源CO2の外側に描かれており、これは「調整後排出量」と同様の考え方であるため、正誤確認が必要である。
この見直しを行う場合、需要家による新基礎排出係数の低い小売電気事業者の選択や、非化石証書等の自らの直接購入といった、自主的な削減努力が進むことが期待される。
他方、小売電気事業者において、3種類の排出係数(従来の基礎排出係数(事業者別)、新たな基礎排出係数(メニュー別)、調整後排出係数(メニュー別))を算定する必要があり、負担が増加することが懸念材料である。
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