現行制度において、電気の基礎排出係数は、小売電気事業者が調達した電気の「電源構成」に基づいて算定する。結果として、1つの小売電気事業者は1つの基礎排出係数を持つこととなる。
これに対して調整後排出係数は、非化石証書の取引や、小売電気事業者が調達・使用したクレジット等の環境価値を反映するものであり、複数のメニュー(複数の調整後排出係数)を設けることも可能である。
小売電気事業者による、現行の排出係数算定式は図5のとおりである。調整後排出係数は、基礎CO2排出量に、FIT・非FIT非化石買取電力量に応じた加算、非化石証書に応じた減算、クレジットによる減算をした上で、販売電力量(使用端)で除して算定する。
調整後排出係数の算定に用いられる用語の概要説明は以下のとおりである。
まずFIT電気については、電気そのものは再エネ発電設備により発電されたものであるが、その環境価値は、FIT電気の買取費用を実際に負担(再エネ賦課金を支払い)している需要家に帰属する、と整理されている。よって、環境価値を持たないFIT電気の排出係数としては、全国平均排出係数が用いられる。
このため、電気事業者の調整後排出係数算定において、当該電気事業者のFIT買取電力量の多寡に応じてCO2排出量が加算される。その算定式は「当該電気事業者のFIT買取電力量×全国平均排出係数」であり、FIT電気の買取量が多いほど、小売電気事業者の調整後排出係数は悪化する(高くなる)こととなる(例えば、九州電力の基礎排出係数は0.000299、調整後排出係数は0.000479t-CO2/kWh)。
この裏返しとして、FIT非化石証書によるCO2削減効果(=排出係数)は、全国平均排出係数相当とされている。さらにこの延長線上にあるものとして、非FIT非化石証書によるCO2削減効果(=排出係数)についても、全国平均排出係数相当とされている。
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