電力の「新・基礎排出係数」を創出へ、非化石証書等の取引を反映可能に法制度・規制(1/6 ページ)

一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者に対し、その排出量などの報告が義務付けているSHK制度。同制度において報告内容の算出に利用する電力の「基礎排出係数」について、環境省と経産省では、非化石証書等の取引実績を反映できる新たな仕組みを導入する方針だ。

» 2023年07月13日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)」は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づき、温室効果ガス(GHG)を一定量以上排出する事業者に、自らの排出量の算定と国への報告を義務付け、報告された情報を国が公表する制度である。

 SHK制度では、排出者自らが排出量を算定することによる自主的取り組みのための基盤の確立と、情報の公表・可視化による国民・事業者全般の自主的取り組みの促進・気運の醸成を目的としている。

図1.SHK制度の算定・報告から公表までの流れ 出典:SHK制度算定方法検討会

 SHK制度における算定方法は、国家インベントリの算定方法を踏まえて規定されているが、国家インベントリの算定方法は毎年見直しが行われている一方で、SHK制度では、2006年の制度開始以来ほとんど算定方法の見直しがされていなかった。

 このため、環境省と経済産業省は2022年に共同で「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会」を設置し、算定方法の見直しについて検討を行ってきた。

 2023年度の検討会においては、電気の使用に伴う排出量の算定方法や、CCS・CCU・森林吸収等の扱いについて検討を行う予定としており、その第6回(2023年度では初回)会合では、電気の使用に伴う排出量の新たな算定方法案などが示された。

SHK制度 算定の基本的な考え方

 SHK制度では、最新の科学的知見に基づき、国家インベントリの算定方法を踏まえた算定方法とすることを原則としている。

 他方、報告事業者数は中小規模事業者も含めて12,000以上に上るため、事業者の算定・報告負担を軽減することも重要であり、エネルギー起源CO2については省エネ法の枠組みを活用するなどの工夫が行われている。

図2.SHK制度の算定方法の設定方法 出典:SHK制度算定方法検討会

 また、SHK制度の目的である「自主的取り組み」を促進するため、事業者の削減努力を可能な限り反映する観点から、SHK制度で独自に設けられたものが、「電気事業者別排出係数」や「調整後温室効果ガス排出量」等である。

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