EV普及に欠かせない「充電インフラ」、政府が新たな整備指針案を公表電気自動車(2/5 ページ)

» 2023年09月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

充電インフラの新たな整備目標を策定

 これまでのEV充電インフラの2030年整備目標は15万基(公共用の急速充電器3万基を含む)であったが、新たな整備目標では充電器の「口数」で表すこととして、公共用の急速充電器3万口を含む充電インフラ30万口の整備を目指す、とした。

 経済産業省は、これまでも基数と口数をほぼ同じ意味で使用してきたと説明しており、実質的に整備目標が2倍に強化された。急速充電器では複数口化も進んでいるため、目標が「口数」として明確化されたことは望ましいと考えられる。

表2.高速道路のSA・PAにおける急速充電器整備状況 出典:NEXCO3社

 また、ユーザーの利便性という観点からは充電器の口数だけでなく、充電器の高出力化(≒充電時間の短縮化)を進めることも重要である。

 よって指針では、充電器全体の総出力に関する目標が新たに設定された。具体的には、急速充電器の平均出力を現在の約40kWから80kWまで倍増させること等を通じて、充電器全体の総出力を現在の約39万kWから約400万kWへと引き上げる。これにより、2030年には充電器の口数・総出力のいずれも、現在の10倍規模となる。

 なお、整備目標としながらも、これらの数値は「目安」であるとして、今後の技術進展やEV・充電器の普及状況等も踏まえ、口数や出力の目標は不断に見直すこととしている。

高速道路における急速充電整備目標

 高速道路のSA・PAにおける急速充電器の設置数は、2022年度末時点で546口であるが、50kW未満の充電器が4割強を占めている。

 指針では、今後の新規設置については、原則、1口の出力を90kW以上として、複数口に対応した機器を設置する。また1カ所に4口以上設置する場合には、原則、1口150kW(150kWにアップデート可能な充電器も含む)を1口以上は設置する。50kW以上の急速充電器であれば、30分間の充電で少なくとも10kWhは充電可能であることが見込まれ、EVの電費が7km/kWhであれば70kmの走行が可能となる。

 よって、インターチェンジ(IC)付近の高速道路外のEV充電器の活用も含め、概ね70km以上の間隔が開かないように急速充電器を整備する。この「70km」については、米国では全米の州間道路に50マイル(約80km)間隔で、欧州は欧州横断交通網に60km間隔で設置することを目標としていることからも、遜色のない水準であると考えられる。

 すでに高速道路会社と充電事業者は、SA・PAにおいて、2025年度までに1,100口程度の急速充電器を整備する計画としているが、指針では、IC付近の高速道路外のEV充電器の活用を含め、2030年に2,000〜2,500口を目安として掲げている。

図3.高速道路における充電器の稼働率 出典:充電インフラ整備促進に向けた検討会

 他方、現時点では、高速道路であっても稼働率が高い充電器はごく一部であり、大半は稼働率が10%に満たない状況であるため、充電器ネットワーク維持の在り方については、今後も継続検討とする。

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