EV普及に欠かせない「充電インフラ」、政府が新たな整備指針案を公表電気自動車(5/5 ページ)

» 2023年09月06日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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普及促進に向けた規制・制度面での対応

 普通充電器の認証であるJARI認証においては、国際規格も踏まえ現状では6kW(電圧200V×電流30A)を認証基準の上限としている。

 高出力化のニーズを踏まえ、JARI(一般財団法人日本自動車研究所)では10kW(=電圧200V×電流50A)への引き上げを検討中であり、年度内の基準見直しを目指している。

 普通充電器において10kWを超える出力を実現するに当たっては、電気用品安全法や内線規程等の民間規程等の見直しが必要とされる。

 また、急速充電器の更なる高出力(高電圧)化による超急速充電は、充電時間の短縮につながる一方で、設置費用や電気料金が非常に高くなるため、ユーザーの立場でのメリットとデメリットの比較検討が必要とされる。

図5.経路充電のための適正な充電出力 出典:CHAdeMO協議会

 よって、まずは高速道路における150kW級の急速充電器の整備を強化すると共に、欧米における350kW充電への拡張可能性やDC800V対応車両の普及動向を視野に入れ、超急速充電に関する法的・技術的な課題について、自動車OEMや充電事業者等と検討を継続することとする。

 公共用の充電器については、充電事業者が変更されても、充電設備を継続して使用できることや、不具合が発生した際に遠隔で管理・運用できることが重要である。

 充電などの課金や充電器の保守・運用などを、専用の端末や特別なネットワークを介さず行うため、「充電設備と管理・運用システム」間の通信を標準化する通信規格が開発されており、欧米ではオープンプロトコル「OCPP」が普及している。よって、今後は日本でもOCPPの通信規格を推進することとして、2025年度以降の補助金の要件として、充電器(受電装置)へのOCPPの搭載を求めることとする。

 EVと充電器それぞれが多様化、高性能化していくことに伴い、EV車両と充電器間のソフトウェアまたはハードウェアの接続で不整合が発生し、充電ができない、充電出力が低い等の不具合が生じている。

 このため、CHAdeMO協議会において、希望する車両OEMがCHAdeMO認証を受けた様々な充電器と接続確認ができる場として、2023年度内にマッチング・テストセンターを設置する予定としている。このテスト結果については、CHAdeMO協議会のホームページにおいて公表する。

図6.EV車両と充電器の多様化に伴う新たな問題 出典:e-Mobility Power

充電ビジネスの自立と充電器ネットワークの維持

 今後、充電器の高出力化が進むにつれ、そのコスト回収の観点での充電事業者の事業継続性やユーザーの納得度向上の観点から、充電した電力量(kWh)に応じた課金(従量制課金)体系の導入が求められている。

 よって指針では、2025年度からの従量制課金の広範な導入を目指し、CHAdeMO協議会と電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)が中心となり、従量制課金への対応・導入に必要な具体的ルール作りを進めることとした。

 また現在、無料もしくは非常に安価な充電料金の充電設備が一部で運用されているが、一定の密度で充電器を整備し、将来的にも充電器ネットワークを維持し続けるために、少なくとも補助金で設置される充電器については適正なコスト負担をユーザーに求めることなどを、充電事業者や設置自治体において、継続検討していく予定としている。

 「充電インフラ整備促進に向けた指針(案)」については、すでに8月30日からパブリックコメント募集が開始されており、10月上旬を目処に「指針」の策定を予定している。

 指針では、継続検討とされた課題が多く残されており、指針の策定後も各論の具体化が求められる。

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