2023年夏に電力不足を回避できた理由とは? 冬季の電力需給の見通しも明らかに(3/6 ページ)

» 2023年10月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

2023年度夏季における原子力供給力実績

 全国最大需要時(7月27日14〜15時)における原子力供給力の実績は966万kWであり、想定値(7月)927万kWを39万kW上回った。

表2.2023年度夏季 原子力供給力実績 出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 今年度の電力需給検証報告書ではその上振れの理由が説明されていないが、同様の傾向であった昨年度の報告書によれば、伊方3号の定格熱出力一定運転による増加(+2.4万kW)などであったと考えられる。

 「定格熱出力一定運転」とは、原子炉熱出力を国で認められた定格値(100%)に保って運転することであり、これにより、海水温度の低い冬季には電気出力が1〜4%程度増加する。

 なお伊方3号では、2002年から定格熱出力一定運転を実施しているなど、全国的にも現在ではこれが一般的な運転方法であることから、事前想定値でこれを考慮しないことは、過度に保守的な算定となっている可能性もある。

2023年度夏季の太陽光供給力実績

 全国最大需要時(7月27日 14〜15時)における太陽光供給力の合計は3,806万kWであり、事前の想定値(7月)1,797万kWを2,010万kW上回り、事前の想定値から最大の供給力上振れ要因となった。

 これは、太陽光発電は電力需要のピーク時間帯に十分な日射量が見込めるとは限らないことから、事前の想定においては、EUE算定による火力等の安定電源代替価値を供給力として見込む方式としているためである。

 広域機関では毎年度、エリアごと、月ごとに、太陽光等の「調整係数」を算出し、公表している。

表3.2023年度夏季 太陽光供給力実績 出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 なお、2023年夏季の全国最大需要日7月27日において予備率が最小となった時間帯16〜17時における太陽光供給力は1,614万kWであり、上記14〜15時の3,806万kWと比べて▲2,192万kWと大きく減少している。

 以上より、2023年度夏季の予備率は、全国最大需要時に14.4%、最小予備率時は11.3%であり、各エリアとも安定供給を確保することが出来た。

 なお北海道エリアでは、8月下旬に最大需要が猛暑H1想定を上回ったため、2024年度夏季の需給検証では、新たなH1需要が設定される予定である。

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