卸電力市場価格が大きく変動するなか、電力調達のリスクヘッジ手法の一つとして今後の取り引きの拡大が期待されている電力先物市場。政府は電力先物市場の活性化に向け新たな検討会を設置し、具体的な対策の検討を開始した。
コモディティ(商品)の一つである電力は、日々その取引価格が変動するものであり、売り手/買い手とも適切なリスクの管理が求められる。電力卸取引のリスクマネジメント手段としては、現物の相対取引(先渡取引)や取引所の先渡市場、先物市場など多様な手段が存在する。
国内では、2019年9月に東京商品取引所(TOCOM)が電力先物を試験上場し、European Energy Exchange(EEX)が2020年に日本電力先物のOTC(Over the Counter)取引に係るクリアリングサービスを開始したことにより、JEPXスポット市場の現物取引量に対する電力先物の規模は、5〜8%程度まで増加している。
近年、国際的な燃料価格の乱高下や、国内の再エネ電源導入の拡大等により、卸電力市場価格が大きく変動しており、電力先物のさらなる活用が期待されることから、経済産業省は新たに「電力先物の活性化に向けた検討会」を設置し、電力先物の現状整理及び活性化に向けた検討を開始した。
電力先物の代表的な機能が「価格リスクヘッジ」機能であり、電力先物市場を活用することにより、電気事業者は現時点において将来の電力の売買価格を確定でき、価格変動のリスクをヘッジできる。これにより、実質的に価格を固定する効果が得られる。
例えば図2左のようにリスクヘッジなしで販売する場合、将来の販売時に価格が上昇すれば、より多くの利益を得られるが、販売価格が下落した場合は損失を被ることになり、事業者は常に価格変動リスクに直面している。
他方、図2右のように先物市場でリスクヘッジ(売りヘッジ)する場合、
ことにより、いずれの場合でも、当初に見込んだ利益を確保することが可能となる。つまり、電気事業者といった当業者の場合、電力先物単独で利用するものではなく、現物取引とセットで両者の損益を相殺することが、価格リスクヘッジの基本形となる。
また、電力そのものの調達・販売に係る価格変動リスクだけでなく、発電事業者であれば、燃料先物と電力先物をセットで利用することにより、発電マージンを事前に固定することが可能となる。
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