電力先物市場の現状は? 政府が市場活性化に向けた検討をスタートエネルギー管理(3/4 ページ)

» 2023年12月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

市場類似施設による取引の増加

 電力先物は取引所だけでなく、商品先物取引法の許可を得た「特定商品市場類似施設」でも取引が可能である。

 立会取引の流動性が現時点十分でない中で、商品市場の外で場を開き、OTC取引をマッチングさせる類似施設での約定が増加しており、類似施設の運営事業者が価格情報を集約・発信し、事業者のマッチングを促したうえで、クリアリング目的でTOCOM/EEXを利用する流れがすでに定着している。

 類似施設の代表例であるenechainでは、現物やデリバティブ、相対や市場取引など、さまざまなツールを組み合わせて電気事業者をマッチングし、ヘッジ取引の場を提供している。

図6.類似施設による電力先物約定量推移 出典:電力先物の活性化に向けた検討会

電力先物取引と現物取引の連携

 電力先物市場の流動性を上げるための方策の一つが、ユーザーの利便性を向上させることである。電力先物は金融的決済(差金決済)であり、電気事業者は先述のとおり、JEPXスポット市場や相対取引等を通じた現物の売買を別途行なう必要がある。よって、TOCOM電力先物市場単独の取組にとどまらず、JEPX現物市場や相対取引との連携を高めることにより、電気事業者のリスクマネジメントの有効性を高めることが期待される。

 欧州では、電力先物を扱うEEXと、現物を扱うEPEX SPOTの協力に基づき、EEX先物商品における各市場参加者のポジションに応じ、物理的受渡サービス(Future-to-Spot Service)の利用が可能であり、市場参加者は受け渡し段階において、金融的決済とするか、物理的決済とするかを選択することができる。当該サービスを活用することで、時間的節約や入力ミスなどのヒューマンエラーのリスク低減が可能となっている。

 日本においても、2023年1月にTOCOMとJEPXの間で覚書を締結しており、ユーザーの利便性向上に向けた連携策について、検討を行っている。

図7.TOCOMとJEPXの間の連携の例(イメージ) 出典:電力先物の活性化に向けた検討会

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.