カーボンリサイクル(CR)製品の利用にインセンティブを与え、その利用を促進するためには、CR製品の利用者が排出削減価値を主張できることが望ましい。また先述のとおり、CO2回収価値はカーボンリサイクル(CR)製品の「使途の証明」と組み合わせることにより、初めて「排出削減価値」となるものである。
仮に、回収されたCO2そのもの(CR製品)と、CO2回収価値を完全に切り離す場合、制度の複雑化や混乱を招くおそれもあることから、CO2回収価値の移転は、CR製品の販売・契約時点で付帯するなどにより、CR製品の移動と連動させることとする。
また、CR製品の新たなカウントルールを実現するためには、CO2回収価値を証明する「証書」が不可欠となるが、検討会事務局では、これはSHK制度の中で議論するのではなく、民間事業者のイニシアティブに委ねることとしている。
すでに日本ガス協会では、合成メタン(e-methane)の環境価値を証明する「クリーンガス証書」の認証スキームの構築に向けた準備を進めており、これが始動した時点で、SHK制度において使用できるよう検討を行う予定としている。
また、CR製品は多種多様であるため、排出削減価値の主張に必要となる「使途の証明」については、CR製品ごとに整備される形が望ましいとしている。
上記の新たなカウントルールは、CR製品とその利用者の存在を前提とした建付けとなっているが、「利用」にあたらないCCSについても同様に適用することが可能である。
カウント方法としては、CCSに適用する場合も、原排出者が一旦、CO2排出量を計上する。回収者が創出した「回収価値」を、貯留者が地下貯留行為と組み合わせることにより「排出削減価値」を創出し、原排出者はそれを調達することにより、自社の排出量から控除することが可能となる。
CCU・CCSに伴う排出削減量を、基礎排出量または調整後排出量のいずれから控除するかや、輸送や貯留などCO2サプライチェーンの過程での漏洩等のカウントの扱いなどについては今後の検討課題である。
ただし、筆者の私見では、調整後排出量からの控除でよいのであれば、クレジットや証書によるオフセットの一つとしてCCU・CCSを扱えばよく、本提案のような複雑なカウントルールは不要と考えられる。排出量の初期配分がどのようなかたちであっても、合理的に削減量(削減価値)が取引されるならば、費用負担と調整後排出量は最適化されると思料する。
仮に証書等による「調整」(オフセット)が受容されない要因があるならば、その要因を分析し、適切な対策を取ることが求められる。
検討会では、2024年度内に政省令の改正を行い、2026年度報告(2025年度実績)から、CCU・CCSの新たなカウントルールを反映する予定としている。
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