太陽光発電のモデルプラントについては「住宅用」と「事業用」に分け、住宅用では、これまでに設置された全てのFIT案件の中央値4.8kW・平均値5.2kWの水準を踏まえ、5kWをモデルプラントとする。
また、事業用では案件数は低圧(10〜50kW)が最多であるものの、FIT「地域活用要件」が課されているなど特異な状況もあるため、2021年検証と同様に、250kWをモデルプラントとして採用しつつ、50kW以上の実績をもとにコスト検証を行う。耐用年数については、事業用太陽光は25年・30年の2ケース、住宅用では20年・25年・30年の3ケースを想定して試算する。
直近のモデルプラントの諸元としては、実際のコストデータを参照することが適切であるため、再エネ特措法に基づく定期報告等で得られた発電所コストの中央値を参照する。
太陽光発電の建設費のうち「設備費」については、習熟曲線の考え方を用いた試算を行う。前回2021年検証では、世界の累積生産量が倍増するごとに、設備費が20%低下する(習熟率20%)と想定しており、当時の試算結果を定期報告によって得られた実績と比較すると、概ね一致していることが確認できる。
1992年から2022年までに導入された世界の太陽光パネル(モジュール)の平均コストは、習熟効果により、累積生産量が倍増するごとに約23%低下しているのに対して、パネル以外の設備費(パワコン、架台、その他機器)の習熟率については既往研究が確認できていない。なお、再エネ特措法定期報告データによると、2018年→2023年におけるコスト低減率は、パネルが36%減、パネル以外の設備費は33%減であり、パネル以外の設備費のコスト低減率の方が小さい傾向にある。
これらを踏まえ、設備費全体としては、習熟率20%を試算の「基本ケース」とする。また、IEA PVPS「Trends in Photovoltaic Applications 2023」によると、直近の太陽光モジュールの習熟率は42%であるため、これを「参考ケース」として試算する。
太陽光の日本の設備費(2023年)は、住宅用:19.9万円/kW、事業用:10.8万円/kWであるのに対して、世界(各国平均)の設備費(2022年)は、住宅用:18.6万円/kW、事業用:7.5万円/kWであり、日本は各国平均よりも高価格となっている。
習熟曲線で用いる累積導入量の見通しは、IEAのStated Policy Scenario(公表政策シナリオ)を基本ケースとしつつ、参考ケースとして、IEAのAnnounced Pledges Scenario(表明公約シナリオ)及びNet Zero Emissions by 2050 Scenario(ネット・ゼロ排出2050年実現シナリオ)も示すこととする。
設備費について、①国際水準に収斂せず一定の内外価格差が残る「基本ケース」、②国際水準に収斂して内外価格差がなくなる「参考ケース」として試算したところ、IEA:STEPシナリオの2040年事業用太陽光設備費は、非収斂ケースで6.1万円/kW、収斂ケースで3.8万円/kWとなった。
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