洋上風力発電の事業リスクを軽減、インフレ等に対応する価格調整スキームを導入へ第26回「洋上風力促進WG」(4/5 ページ)

» 2024年10月01日 10時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

価格調整スキームの導入も検討

 FIT/FIP制度においては、調達期間/交付期間にわたり調達価格/基準価格を固定することにより、再エネ発電事業への投資に対する予見可能性を確保している。他方、物価変動等により、費用が大きく上昇した場合でも売電単価は原則変わらないため、投資額が大きく総事業期間の長い洋上風力発電では、これが大きなリスクとなる。なお、一定の物価上昇については、IRRへの上乗せというかたちですでに調達価格/基準価格に反映されている。

 また、洋上風力発電事業者がコーポレートPPAにより売電している場合には、収入サイドも大きく変動するリスクがある。

 こうした課題に対応するため諸外国では、基準価格等を物価変動等と連動させる「価格調整スキーム」が導入されており、現在未導入の欧州諸国においても、欧州委員会の「European Wind Power Action Plan」に従い、物価変動条項が導入される可能性があると考えられている。

表4.海外主要国における物価変動条項の有無と種類 出典:洋上風力促進WG

 主要国で採用されている価格調整スキームとしては、「1.物価変動に伴い年次調整する方式」と、「2.落札後一度のみ調整を行う方式」の2つに大別されるほか、参照すべき指標として、消費者物価指数のように物価全体に係る指標を用いる方式と、資材価格といった風力発電コストに関係する指標を用いる方式がある。米国ニューヨーク州の入札では、表5のような指標及び係数を用いている。

表5.ニューヨーク州入札の計算式に用いられた指標及び係数 出典:洋上風力促進WG

 洋上風力発電は事業費の大半を資本費が占めており、資材価格等の変動は事業撤退リスクに直結し得る。このため洋上風力促進WG事務局では、価格調整スキームとして「落札後1度のみ調整を行う方式(1回調整方式)」を採用し、建設期間における資材価格等の変動を基準価格に連動させることを提案している。具体的な費用項目は今後検討を行う。

 なお、たとえ1度であっても価格調整が可能となることは、事業者があらかじめ考慮すべきリスクプレミアムを低下させるため、IRRの引下げを通じたFIP基準価格の低下へとつながる。また、契約や調達などにおける再エネ発電事業者自身の創意工夫を促すため、価格調整スキームの発動には一定の閾値(物価変動率の下限)を設定することを検討する。なお、価格調整は、インフレによる上昇断面だけでなく、デフレによる下落断面にも適用される。

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