2040年の火力発電のコスト検証を開始 CO2分離回収や水素混焼の普及も視野に2024年第3回「発電コスト検証WG」(2/4 ページ)

» 2024年10月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

化石燃料の将来価格の考え方

 火力のモデルプラントは2040年運開、40年間稼働を前提としているため、化石燃料価格についても、2079年までの将来価格を設定する必要がある。

 コスト検証WGでは、従来と同様に、国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook」(WEO)に記載されている日本等の価格トレンドの見通しを利用して、将来の燃料価格を推計することとした。なお、図1の数値はWEO 2023年版を参照したものであるため、今後数値を2024年版に差し替える予定としている。

 WEOでは複数のシナリオが示されているが、コスト検証WGでは、各国が公表済みの政策を加味したシナリオである「Stated Policies Scenario(STEPS):公表済政策シナリオ」を基本として、「Announced Pledges Scenario(APS):表明公約シナリオ」や「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE):ネット・ゼロ排出2050年実現シナリオ」についても参考として示すこととする。WEOでは2050年までの価格しか示されていないため、2030年〜2050年のトレンドが2051年以降も直線的に継続すると仮定する。

図1.化石燃料の価格見通し 出典:発電コスト検証WG

 また、化石燃料の将来価格については、複数の研究機関等が様々な見通しを示しているように、燃料価格を正確に見通すことは困難である。このためWGでは、標準シナリオの燃料の価格に対して、「±10%」及び「±20%」の変動が生じたと仮定した感度分析を行うこととしている。

CO2対策費用・CO2価格の考え方

 CO2対策費用は、将来負担が生じると想定される社会的費用(環境外部費用)の一部を内部化するものである。

 公共事業の費用便益分析では、「炭素の社会的費用(Social Cost of Carbon:SCC)」という手法が用いられる場合もあるが、影響の対象や割引率の想定次第でSCCの値は大きく変動することが知られている。このため、コスト検証WGでは次善策として、排出量取引制度におけるCO2価格を参照することとしており、従来のWGでは、先行するEU-ETSの将来価格を用いてきた。

 日本でも2023年度からGX-ETSの第1フェーズが試行的に開始され、東証カーボン・クレジット市場では、J-クレジットが取引されている。よって、この2023年度平均約定価格2,479 円/t-CO2を、現時点のCO2価格と認識することも可能である。

図2.CO2価格の見通し(WEO2023を用いた暫定値) 出典:発電コスト検証WG

 また、エネルギー情勢が日本に類似すると考えられる韓国では、すでに2015年から排出量取引制度(K-ETS)が運用されており、WEOでもその将来価格が推計されている。よって、今回のコスト検証WGでは、2050年のCO2価格として、EU-ETSとK-ETS両者の幅を持って示すこととして、2051年以降については、2050年の価格を横置きする。

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