2040年の火力発電のコスト検証を開始 CO2分離回収や水素混焼の普及も視野に2024年第3回「発電コスト検証WG」(3/4 ページ)

» 2024年10月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

CCS付火力発電のコスト検証

 CCS付火力発電の発電コスト検証は、2040年に運転開始する火力発電にCCSを付けた際のコストを検証するものであり、火力発電そのものの設備容量や設備利用率等は先述のモデルプラントと同一である。

 国は「先進的CCS事業」において、火力発電所10か所でのCO2分離回収の設計等を支援しているが、これらはまだFSやpreFEED(概念設計)の段階である。建設費については、この「先進的CCS事業」を参考として、CCS付石炭火力で約42.1万円/kW、CCS付LNG火力で約44.3万円/kWと設定する。

 なお、CO2分離回収設備の稼働に電力を消費するため、CCS付火力の実質的な発電電力量は減少する。このためCCS付火力の発電効率は、CCSなしの火力発電と比較して石炭火力で3.8%、LNG火力で4.5%減少することとなる。

 CCS付火力発電のコスト検証は、火力発電所における追加的費用や、CO2の分離回収、回収したCO2の輸送、貯留、の各段階の費用を対象とする。

図3.火力発電のCCS追加に伴うコスト要素 出典:発電コスト検証WG

 CO2回収には複数の方法があるが、今回のコスト検証では、化学吸収法を対象とする。CO2の回収には費用が掛かるため、CO2価格次第でCO2の回収率は変わり得るが、今回のコスト検証では回収率90%と設定する。分離回収されないCO2は、CO2対策費のほうで費用計上する。

 分離回収したCO2の輸送方法については、「先進的CCS事業」では、パイプライン輸送だけでなく、回収したCO2を液化して船舶輸送する計画が複数あることを踏まえ、これら2つの輸送方法をコスト検証の対象とする。輸送量は300万t-CO2/年をベースケースとして、パイプラインでは200kmの輸送を想定し(ベースケース)、関連設備建設費を1,160億円と設定する。船舶輸送ではベースケース1,000kmの場合、建設費を1,325億円と設定する。

 海底下への貯留量は300万t-CO2/年をベースケースとして、6本の坑井で50万t-CO2/年・坑の圧入レートを想定し、建設費を694億円と設定する。

 CO2地下貯留後のモニタリングについては、今後CCS事業法等に基づき規定されるが、現時点では制度詳細が未定であるため、今回の検証においては、20年間の費用を99億円と設定する。

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