中国九州間連系線(九州向き)は、熱容量が夏季278万kW〜冬季326万kWであるところ、周波数制約及び太陽光発電不要解列量の控除により、現在の運用容量は0〜45万kWとかなり小さく設定されている。従来、「九州向き」のkWh取引は少なく、運用容量の拡大ニーズも無かったため、負荷制限は織り込まれていない。
ところが、供給力(kW)が不足する九州エリアでは、連系線運用容量不足が一因となり、容量市場の約定処理上の市場分断が発生し、供給力確保費用の増加や、供給信頼度が低い状態が続いている。
従来、九州向きのスポット取引市場分断はほぼ発生しなかったことから、運用容量は実運用で2点データ(48コマの昼間帯・夜間帯の最小値)を使用していた(図8の青色破線)。
2024年4月以降、九州向きの市場分断が散見されたため、九州電力送配電は「ステップ1」として、2024年6月1日より48点データに細分化したことにより、点灯帯には+40万kW程度、運用容量が拡大している(図8の黒線)。
また中西エリアでは、2018年の北海道ブラックアウトを踏まえ、大規模電源脱落時のレジリエンス対応として、「負荷遮断を59.1Hzで実施」するために、負荷側UFR(周波数低下リレー)を中西各社で一律設定のうえ設置している。
九州電力送配電では「ステップ2」として、この「59.1Hz負荷側UFR」を活用し、負荷制限量として織り込むことにより、点灯帯を中心に10〜60万kW程度の運用容量が拡大可能と考えている(図9の赤線)。
なお、59.1Hz整定にはデジタル型UFRを使用する必要があり、現時点、アナログ型からの取替を進めている途中であるため、ステップ2の運用容量拡大については、2026年度頃を予定している。
ステップ1・2のいずれも、年間計画段階で運用容量を拡大することが可能であるものの、昼間帯は太陽光(PV)出力の影響により、拡大幅が小さい結果となっている。これは、運用容量設定においてPV不要解列量を、天候に関わらず発電実績の設備容量比2σ値で月毎に一律で控除していることや、PV出力と需要の相関(逆相関)を十分に考慮していないことが理由である。
九州エリアでは特に冬季において、需要とPV出力は一般的に逆相関にあることや、昼間帯に最大需要が発生することを考慮するならば、「ステップ1-2」としてPV不要解列量の見直し、「ステップ2-2」として負荷制限量の積み増しが可能となると考えられる。
冬季に前々日時点で曇天(PV出力が小さい)と予想される場合は、そもそも不要解列してしまうPVは少ないのと同時に、寒さによる高需要とPV逆潮流の少なさがあいまって負荷制限量は十分確保できる、という現実に即した考え方への転換である。
九州電力送配電では今後、電力需給検証や中長期的な供給信頼度(EUE)の算定においても、同様の考え方の適用について、広域機関と連携し、検討を進める予定としている。
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地域間連系線の運用容量拡大策 EPPS動作条件の見直しと負荷制限の織り込みCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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