洋上風力発電の港湾利用における課題 国交省が対応策をとりまとめ第3回「洋上風力発電の導入促進に向けた港湾のあり方に関する検討会」(3/4 ページ)

» 2025年04月22日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

洋上風力発電所の大規模化への対応

 国は基地港湾として、これまで0.5GW(50万kW)規模の発電所を想定した検討を行ってきたが、近年国内でも1GW超の案件形成が進みつつある。一方、洋上風力発電事業者からは、欧州と比べて日本の基地港湾にて確保する面積が小さいため、洋上風力施工期間の短縮が困難との課題が指摘されている。

 図5左のように、プレアッセンブリ(PA:陸上での風車の事前組み立て)等エリアの岸壁のみを利用する場合、PA時はタワーが岸壁にあり資機材搬入ができず、あらかじめ資機材の全量を保管エリアに搬入する必要があるため、全体として広い面積(合計27.5〜32.0ha)が必要となる。

図5.発電所規模50万kWの基地港湾の必要面積 出典:洋上風力発電導入促進に向けた港湾のあり方検討会

 これに対して、図5中央のようにPA等エリアの岸壁に加え、隣接岸壁も利用する場合、資機材をジャストインタイムで搬入することが可能となるため、保管エリアの面積を圧縮することにより必要総面積は12.5〜14.5haで済む。実際に海外では、施工を短期間で効率的に実施するため、基地港湾を補完する別の港湾を利用している。

 このため検討会では、発電所規模0.5GW以上の案件では基地港湾(埠頭)に加え、他の埠頭(隣接岸壁、当該港湾内、他港湾)の利用を組み合わせることも選択肢として基地港湾(埠頭)を計画・整備・利用することとし、行政側から事業者に対して基地港湾の効率的な利用事例などの情報提供を行うこととした。なお、他の埠頭利用にあたっては、周辺の港湾利用への影響に対する配慮と既存利用者との調整が必要となることに留意が必要である。

 今後の基地港湾の計画では、SEP船による風車部材搬出と貨物船による資機材搬入の2バース利用ができるよう、他埠頭の利用も含めて検討する予定としている。

風車資機材の輸送船舶の多様化への対応

 これまで海外から輸入する洋上風力発電の資機材については、港湾での荷役は重量物船に装備された本船クレーンの使用が想定されていた。近年、ナセルや基礎等の国産化が進んでおり、国内の資機材製造拠点から基地港湾への輸送は、貨物船のほか、バージ(非自航)やモジュール船(自航)での輸送が計画されている。

 このような国内輸送ではクレーンではなく、モジュール船等の甲板と岸壁を概ね同じ高さに合わせ、そこにランプウェイ等を渡し、貨物多軸台車を使って荷卸しする「ロールオフ荷役」が行われる。

図6.ロールオフ荷役時の課題 出典:洋上風力発電導入促進に向けた港湾のあり方検討会

 このとき、モジュール船等の甲板より岸壁のほうが高い場合、ロールオフ荷役時にかけ渡すランプウェイによって岸壁が損傷するおそれがある。また、岸壁法線背後に設定された荷重制限エリアが大きい岸壁でランプウェイを使用すると、ランプウェイ端部の荷重が大きくなるほか、ランプウェイの先に続く長いスロープによって荷さばき地が大きく占有される恐れがある。

 今後の基地港湾整備では、ロールオフ荷役に配慮した施設構造とすることや、潮位等の海象条件、防波堤等による静穏度、船舶喫水等の船舶仕様を踏まえて、岸壁の高さを設定することとした。また必要に応じて、部分的に段差を設けて天端高を下げることやランプウェイに対応したスロープを設けるなどの、部分的な改良についても検討を行う予定である。

図7.部分的な改良案(岸壁の一部切り下げ) 出典:洋上風力発電導入促進に向けた港湾のあり方検討会

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