建築物のライフサイクルカーボン削減へ 2028年度のLCA制度開始に向けたロードマップ「建築物のライフサイクルカーボン削減に関する関係省庁連絡会議」(3/5 ページ)

» 2025年05月23日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

不動産・金融分野における取り組み

 日本の不動産分野におけるESG投資の規模は年々増加傾向にあり、現時点の投資残高は15兆円に上る。世界の金融市場からは、気候変動リスク等への対応として、GHG排出量等の開示が求められている。

 不動産業界は、バリューチェーン排出量のうち、Scope3排出量(自社での燃料や電気の使用に伴うScope1,2以外の間接排出量)が多い業界の一つであり、建築資材や施工などアップフロントカーボンの削減に向けた取り組み状況の開示が重要である。

図5.産業別のScope1,2,3の割合 出典:CDP

 このような社会的要請に対応するため、国土交通省では、「不動産分野における気候関連サステナビリティ情報開示対応のためのガイダンス」を作成し、建築物のライフサイクルカーボンを含むScope3の算定方法の概要や削減に向けた取り組み、開示の事例等について紹介している。

 また、企業の有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が進みつつあり、東京証券取引所プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業は、2027年3月期からScope3排出量の開示が義務化され、次第に義務化の対象拡大が予定されている。

建築物への木材利用の促進に向けた取り組み

 木材は、製造時のGHG排出量の少ない建築資材の一つであり、これまで主に低層住宅で使用されてきたが、近年、非住宅建築物や中高層建築物での使用が広がりつつある。

 大林組の11階建て研修施設「Port Plus」では、1,990m3の木材を使用したことにより、約1,652tのCO2を固定しており、そのアップフロントカーボンは一般的な鉄骨造と比べ、約1,700t削減したと試算している。

図6.Port Plusのアップフロントカーボン試算比較 出典:大林組

 木材製品の製造に係るGHG排出量は、木材製品ごとの材積(m3)に木材製品ごとの排出原単位(t-CO2e/m3)を乗じて算出するが、一部の代表的な木材製品(図7)では排出原単位が調査されている。

図7.木材製品の排出原単位等の例(t-CO2e/m3) 出典:林野庁

 なお近年、鉄鋼分野では、ブック&クレーム方式等によりCO2削減価値を割り当てた「グリーン鉄(グリーンスチール)」の製造販売が開始されており、このようなカーボンフットプリント(CFP)が低い鋼材を使用することにより、建築物のアップフロントカーボンを低減することも期待されている。

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