エアコンの冷媒などに使われる代替フロン(HFCs)は、CO2の数十〜1万倍以上の非常に高い温室効果を持つガスであるが、エアコン等機器の使用中や建築物の解体時点で、大気中に漏洩・放出することが問題となっている。機器廃棄時のフロン回収率は、直近で4割程度に低迷しており、旧・地球温暖化対策計画で目標とされていた2030年目標の75%にも大きなギャップが残されている。
このため環境省は、「ビル用マルチエアコンからの確実なフロン類回収のためのガイドブック」等を作成し、フロン類の回収率向上に努めている。
なお、先述の建築物ホールライフカーボン算定ツール「J-CAT」による30棟を対象としたケーススタディ(試算)では、冷媒のフロン漏洩はライフサイクルカーボンの約7%を占める結果(平均値)となった。
今後、建築生産者・建材製造等事業者等による脱炭素化の取り組みが、建築物LCAの実施により、建築物のライフサイクルカーボンとして可視化が進むと期待される。また、ライフサイクルカーボンが削減された建築物は、建築物利用者や投資家・金融機関によって評価され、脱炭素化に取り組む建材・設備や建築物への需要が拡大すると期待される。
このような好循環を生み出すためには、建材・設備に係るCO2原単位の整備や、建築物LCA算定手法の統一など、制度的な措置や支援策が必要となる。
現在、LCAデータとしては、日本建築学会が産業連関表ベースで構築した原単位があるが、統計に基づく二次データであるため、建材・設備製造事業者個社のGHG削減取り組みは評価できず、原単位の詳細度が不足している等の課題がある。
今後、国は建材・設備製造事業者及びその団体に対して、CFPやEPD(製品環境宣言)に基づく原単位の整備を促すこととして、これらの原単位が整備されていない場合は、産業連関表ベース(統計ベース)の原単位の使用も許容する。また、関係事業者が脱炭素化の進んだ(原単位の低い)建材等を選定できるよう、原単位を公開するデータベースを構築する予定としている。
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