クレジットの取引方法は様々であるが、これまでJ-クレジットでは、国が保有するクレジットの入札のほかは、相対取引が中心であった。主にボランタリー用途で購入する買い手は、クレジット創出の方法論や地域、売り手などを総合的に判断することが重要であるためと考えられる。相対取引では仲介も多く利用されており、複数の金融機関が仲介業務のほか、紹介、情報提供等を行っている。
GX-ETSの試行フェーズが2023年度に開始され、CO2削減価値という共通の基準のもとで取引を行う必要性が高まったことを踏まえ、東京証券取引所は2023年10月に「カーボン・クレジット市場」を開設し、J-クレジットの市場取引(取引所取引)が開始された。
同市場では、標準化のためにプロジェクト単位ではなくカテゴリー単位での取引が行われ、匿名取引が行われる。よって、取引に必要な情報は、カテゴリー・数量・価格のみとなる。取引の利便性や価格の透明性が向上したことにより、同市場での累計売買成立量は2025年4月11日までに約79万t-CO2(一日平均2,172t-CO2)となっている。
もう一つの取引形態として、Web上の取引プラットフォームで売り手と買い手をマッチングさせる「マーケットプレイス型」と呼ばれるものがある。取引プラットフォームは、常時複数のプロジェクト・クレジットを価格情報とともに掲載し、買い手の利便性を向上させている。
なお現時点、国内のクレジット取引は現物取引に限られるが、海外ではデリバティブ取引も盛んに行われている。
海外では、民間イニシアティブに基づく複数のボランタリー・クレジット制度があり、その取引量はすでに数億トン規模に達していることから、複数の国や団体から、クレジット取引に関する指針等が公開されている。
証券監督者国際機構(IOSCO)は、特にボランタリー・クレジットに係る取引の透明性・健全性を高め、投資家保護を促進する観点から、21の論点に関するグッドプラクティスを提案する「Voluntary Carbon Markets Consultation Report」を2024年11月に公表している。
同報告書の提示するグッドプラクティスに法的拘束力はないが、健全な市場構造とボランタリーカーボン市場の金融面でのインテグリティ向上と秩序立った透明性ある取引を促進するものとして、各国当局、取引所、市場参加者に向けられたものである。
また、英国は「Principles for Voluntary Carbon and Nature Market Integrity」、米国は、「Principles for Responsible Participation in Voluntary Carbon Markets」を公表し、クレジットの適切な利用や市場機能の改善を促している。
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