クレジットの登録簿は、クレジットの帰属を特定するために必要不可欠なインフラであるため、その正確性が担保されることが重要である。
また海外では、取引所が認証機関や金融機関とAPI連携しており、取引が完全に自動化されているのに対して、日本では取引の自動化が出来ない状態である。クレジット取引の円滑化・効率化の観点から、改善が期待される。
取引プラットフォームにおける公正な取引の確保の観点からは、運営者による適切なルール設定、モニタリング、エンフォースメントが重要である。日本気候取引所(JCEX)では、AI等の活用により市場濫用の予防を図ると同時に、事後検証策として、ミリ秒単位のアクセスログや取引ログを規制機関に提出している。
またクレジット取引において、データ・契約書・商品設計といった取引インフラがまちまちであると、市場が分断・断片化(fragmentation)するおそれがあるため、取引の標準化は、市場を拡大させる上で有益である。ISDA(International Swaps and Derivatives Association)では、クレジットの現物取引や先渡取引等を対象として、標準化された取引に係る契約書のニーズに応えるため、「2022 ISDA Verified Carbon Credit Transactions Definitions」(VCC定義集)や確認書のテンプレートを公表している。
取引所やマーケットプレイスでは、運営者が定める一定の基準を満たしたクレジットのみが取引されると想定されるが、相対取引では、売り手や仲介者だけでなく、買い手の側でもクレジットの商品性・信頼性の把握に努めることが重要である。
国が制度運用者としてプロジェクト登録・クレジット認証を行うJ-クレジットでは、レピュテーションリスクは極めて低いと考えられるが、東京海上日動火災保険では被保険者が購入したクレジットの創出プロジェクトに対するグリーンウォッシング批判等に対応する費用をカバーする保険商品を販売している。
また、クレジットを自社排出量のオフセットに使用する場合、適切な情報公開が重要であり、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の基準や環境省「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」及び「カーボン・オフセット・ガイドライン」では、クレジットの詳細情報の公開を求めている。
検討会報告書では、カーボン・クレジット取引の透明性・健全性向上に係る論点整理が行われたが、クレジット取引の拡大に向けては、各主体のキャパシティ・ビルディングや国内外での関係者間の連携・対話の強化、販売時説明の在り方等についてのベストプラクティスの形成・共有、法的性質・会計上の位置付けについてのさらなる整理等が求められる。
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