金融視点から見たカーボン・クレジット取引の現状と整備方針――検討会が報告書第7回「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」(3/4 ページ)

» 2025年06月10日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

カーボン・クレジット取引の透明性・健全性向上に係る論点整理

 「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」では、国内外でのクレジット取引の実態やIOSCO報告書等を参考として、カーボン・クレジット取引の透明性・健全性向上に係る論点整理を行った。

図5.検討会報告書の論点 出典:カーボン・クレジット取引金融インフラ検討会

 まず、適切な情報開示、利益相反の防止、関係法令の順守は大前提となる。また、クレジットの市場は黎明期であるため、買い手や売り手だけでなくすべての関係者における、カーボン・クレジットの制度上の位置付け・商品性・取引実務等について知識・経験等を涵養するためのキャパシティ・ビルディングが重要である。このためには、ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)やVCMI(Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative)といった、先行する海外関係者との連携も有効である。

 クレジットの法的性質については、私法統一国際協会(UNIDROIT)において国際的に私法上の議論が行われているほか、日本では金融法委員会の報告書(2024年6月)がJ-クレジットは私法上「その他の財産権」であるとの整理を提案している。会計上の位置づけについては、日本公認会計士協会が会計制度委員会研究報告第17号において考え方を整理している。

取引仲介者・クレジット売主に関する論点

 カーボン・クレジットは制度によりオフセット利用可否が異なるなど、商品性が様々であり、顧客がクレジットを買おうとする目的や知識・経験も様々である。よって、クレジットの取引仲介者・売主は、買主の目的・知識等の顧客属性を踏まえ、買主が購入対象クレジットの商品性を理解できるように適切な説明を行うことが重要である。

 仲介者・売主が金融事業者である場合には、「顧客本位の業務運営に関する原則」の趣旨も踏まえて、買主に対する情報提供等を行うことが重要である。

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