GX-ETS等のカーボンプライシング政策の導入により、今後CO2排出者は、一定のCO2対策コストを負担することとなるため、これがCO2排出者がCCSを行う経済的インセンティブとなる。ただし当面の間、CCSコストは高く、将来的な見通しも不確実であるため、いつの時点で、CO2対策コストとCCSコストが逆転し、CCSを行うことが経済合理的となるか分からないという課題がある。
このため国は、諸外国の制度も参考として、CO2対策コストとCCSコストの差額に着目した支援制度を導入することとした。
本制度による支援期間は、CCSコストとCO2対策コストが逆転するまでの中長期とするが、具体的な期間は今後の検討事項となっている。国による支援期間の終了後は、CCS産業が自律的に成長していくことが想定されている。
なお先述の図1のように、CO2の輸送方法にはパイプラインと船舶輸送があるが、今回の検討対象はパイプライン案件としている。
CCSは分離回収、輸送、貯留の連続的なプロセスで構成されており、このうち一つでも欠けると事業が成立しない。新規CCS案件(特にパイプライン案件)の事業化に際しては、分離回収・輸送・貯留の事業規模やタイミングを整合的に、分離回収事業者、輸送事業者、貯留事業者が同時に意思決定する必要がある。
よって、新たなCCS支援制度では、バリューチェーン全体の立ち上げ支援を目的として、分離回収・輸送・貯留の各事業に係るコストを対象として、事業開始に必要なCAPEX(資本的支出)だけではなく、事業の自立化を見据えたOPEX(事業運営費)も支援対象とすることとした。
先述のとおり、CCS支援制度はCO2対策コストとCCSコストの差額に着目したものであり、本制度では、CCSコストを「基準価格」、CO2対策コストを「参照価格」と呼んでいる。なお、基準価格と参照価格のいずれも、CO2トンあたりの価格であり、支援額はCO2量を乗じることで算定される。
CCSコスト(基準価格)の一つが「分離回収コスト」であり、国内外の技術動向や個別のCCSプロジェクトの状況を勘案の上、国が適正性を審査する。
もう一つのCCSコスト(基準価格)である「輸送貯留料金」については、透明性確保やコスト削減インセンティブを働かせる観点から、オークションにより決定する。オークションでは「CO2トン当たり輸送貯留料金」を評価する。
CO2対策コスト(参照価格)は、支援開始の前年度のカーボンプライシングに関する制度における炭素価格を原則として、より具体的にはGX-ETSの制度設計等を踏まえて検討を行う予定としている。事業者の予見可能性を高めるため、初期参照価格の改定は複数年ごとに実施する。
なお、参照価格が基準価格を超える場合は、参照価格と基準価格の差分を返還することを求める。また、支援の重複を防ぐため、長期脱炭素電源オークションの対象となる電力分野に対しては、CCSコスト差支援措置での支援対象及び基準価格には、長期脱炭素電源オークションの支援範囲の費用を含めないこととする。
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