CCS事業では、CO2排出事業者(分離回収事業者)に固有のリスク、輸送貯留事業者に固有のリスクのほか、分離回収・輸送・貯留のどこか1つのプロセスで生じた停止等が、他のプロセスやCCS事業全体に波及する「クロスチェーンリスク」を抱えており、CCS 事業の黎明期においては特に政策的な対応が求められている。
このため、新たなCCS支援制度では、事業者の責めに帰さない事由による一時的なCO2供給途絶や輸送貯留の停止、又はクロスチェーンリスクが発現した場合、個別に協議の上、支援期間の延長を(支援総額の範囲内で)認めることとした。
この措置は、一般的な「不可抗力事由」のほか、「不可抗力に準ずる事由」にも適用される。「準ずる事由」には、合理的かつ経験豊富な事業者であっても、事前に把握できなかった地下地質構造の障害や貯留層の貯留能力問題の発現などが考えられるが、事業者と国が個別に協議することにより決定する。
事業者の責によるCO2漏洩時やCO2引渡し量・貯留量の未達、事業継続義務違反等の場合には、支援金の返還が求められる。
CCSバリューチェーン全体の継続的なコスト低減を図り、CCS事業の自立化を促すため、制度によるCCS支援の終了後も、支援金交付事業者に対して、CCS事業の継続を義務付ける。義務未達の場合、支援金額の一部を返還することを求める。
支援期間後のCCS継続義務期間は支援期間と同等の長さとして、輸送貯留事業者には支援期間中と同等のCO2受入貯留継続を義務とする。CO2排出者(=分離回収事業者)の場合、実削減を伴う取り組みであれば、CCS以外の方法でも代替可能とする。
CCS事業は、地下資源開発に類似する部分が多いため、地下資源開発に関する技術的・ファイナンス上の専門的知見が生かせる運用・執行体制作りが望まれる。
また今回は、パイプライン案件を先行して検討が行われたが、船舶輸送はCO2排出者と貯留者の柔軟な組み換えが可能という特長があるため、支援措置の早期の具体化が求められる。
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