普通鋼電炉業は、鉄スクラップを電気炉で溶解、精錬して鋼塊を造り、これを圧延加工して鉄筋コンクリート用棒鋼や形鋼などの普通鋼鋼材を製造しており、エネルギー消費量の約8割が電力である。
主に炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)の5つが鉄(Fe)に対する添加元素であり、製品の多くは建築・土木向けに使用されている。
普通鋼電炉業の製造工程は、鉄スクラップから鋳片(鋼塊)を生産するまでを上工程として、鋳片を再加熱・分塊・圧延等を行い、鋼材製品を生産するまでを下工程として、両者をベンチマークの対象範囲とする。
上工程は、最終製品により生産設備構成が大きく変わらないため、「粗鋼生産量当たりの排出原単位」をベンチマーク指標として、下工程では製品によって工程の種類・数やエネルギー投入が大きく異なるため、「投入した燃料の熱量当たりの排出原単位」をベンチマーク指標とする。
電炉では、炉内に還元雰囲気を与え金属の酸化を抑制する「加炭機能」や、鉄スクラップを溶かす際の補助熱源として、コークス等の炭材(加炭材)を少量使用するが、これはCO2の排出源となる。
電炉の上工程においてコークス等の炭材を多く使用する事業者は、熱源としての系統電力使用量(間接排出量)は減少するが、CO2の直接排出量は増加することとなる。
2026年度開始の排出量取引制度では、CO2の直接排出量が規制対象であるため、炭材の使用比率の差異については、一定の考慮が求められる。このため、ベンチマーク指標とする排出原単位の算定においては、直接排出量だけでなく、間接排出量も含めることとした。
具体的には、上工程の排出原単位 は「直接排出量 + 関節排出量」を「粗鋼生産量」で割った値として算定する。
排出枠割当量は、ベンチマークに事業者ごとの直接排出比率を乗じて決定するため、炭材使用量の大小が、有利不利をもたらすことはない。
以上より、普通鋼電炉の排出枠割当量 = 上工程【目指すべき排出原単位 × 直接排出比率 × 基準活動量】+下工程【目指すべき排出原単位 × 基準活動量】として、「目指すべき排出原単位」は、先述図1の上位X%に相当する水準をもとに毎年度設定される。
ここでの直接排出比率は「各社ごとの直接排出量」を「各社ごとの直接排出量+各社ごとの関節排出量」で割った値として算出する。また基準活動量は、上工程では2023〜2025年度における各社ごとの平均粗鋼生産量、下工程では2023〜2025年度における各社ごとの投入した燃料の平均熱量とする。
なお、これまで省エネ法ベンチマーク制度では、不純物の除去や成分調整を行うための炉外精錬プロセスについては原単位の補正を行ってきたが、排出枠割当量算定における補正の在り方については、今後の検討予定としている。
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