オーダーシステム以外の使い道ってあるの? 外食産業でiPad導入スマートデバイス導入のお悩み相談室

スマートデバイスは飲食業ではどのような使い方が考えられるのか? オーダーシステムの置き換えや店舗チェック時のフロー、社員育成など、活用事例を聞きました。

» 2012年09月06日 13時00分 公開
[回答者:早田麻子、文:上口翔子 ,Business Media 誠]

本連載「スマートデバイス導入のお悩み相談室」について

早田麻子さん

スマートフォンやタブレットなどスマートデバイス端末を業務でも積極的に活用したいという現場からのニーズがある一方、管理負荷の問題やセキュリティの不安などから、企業側では導入に踏みとどまるなど、頭を悩ませています。本連載では、そうしたスマートデバイスの業務利用に関する悩みについて、複数社のスマートデバイス導入に携わってきた京セラコミュニケーションシステムの早田麻子(はやた・あさこ)事業部長に、アドバイスをもらいます。


 スマートデバイスは特定業種、例えば飲食業ではどのような使い方が考えられるのか? 数々の企業のスマートデバイス導入にかかわってきた早田さんに、今回は飲食業での活用事例を聞きました。

今回のお悩み:外食産業での活用事例を知りたい

飲食チェーン店に勤務しています。スマートデバイスを導入してペーパーレスや効率化を図りたいと思っていますが、具体的にどのような活用法が考えられるのか、同業種で導入した経験がある企業の事例を参考にしたいので、教えてください。また、個人的に印象に残っている事例などもあれば知りたいです。

早田さんの回答:顧客満足度向上につながる使い方を

 私が担当した外食産業の事例では、いくつかのパターンがあるように思います。いずれもチェーン展開をしている企業の事例です。まずは、店舗のオーダーシステム。次に、エリアマネジャーの業務端末としての利用。そして、印象に残っているのは、スタッフの教育ツールとしての活用です。

 まずは店舗のオーダーシステムですが、最近タッチパネル式の注文端末がずいぶん増えてきていますよね、あれです。居酒屋や回転すしチェーン店などで使った人も多いと思います。店員が注文を取りに行く手間を省けるので、人件費のカットやオーダーミスの削減が期待できます。50人ほどが入る店舗でこれまでピーク時に7人で回していたものが、4〜5人でできたりするのです。お客さんからしても好きな時にイメージなどで確認しながら注文できますし、店員を呼んだのになかなか来ない、などの煩わしさもありません。

 このように以前は「専用機器」だったものを、タブレットのような「汎用機器+専用アプリケーション」の形に変えてコストを下げていくというのは、外食産業に限らず1つの典型ではないかと思います。

 もう1つ、エリアマネジャーが活用する例ですが、これは以前、紙に記入するなどアナログで行っていた作業をスマートデバイスに置き換えるというものです。エリアマネジャーは、店舗周りをして現場をチェック・指導しています。

 そして店舗訪問の際に行うのが、盛り付けや接客態度、店舗内の清掃状況のチェック。以前は携帯電話やデジタルカメラで撮影をし、紙のチェックリストに記録していたものを、スマートフォンで画像や動画を撮影して、評価ポイントもメールや専用アプリで送る。つまり、ペーパーレスでより速く、店舗の評価を終えられるのです。

 送信したデータは、本部で集計。すぐにランキング化します。これも以前は紙に記入した内容をPCに入力して――という作業がなくなるので効率化が望めます。紙に記入したものをいったん集めて、PCにあらためてデータ入力する場面は多くあると思います。転記の労力だけでなく、タイムリーな集計という点でも、こういった業務の効率化には非常に有効ですね。

 また、スマートフォンはデジカメのようにいかにも撮影しています、監視していますという姿を見せずに操作もできます。さりげなく店舗の様子を撮り、スタッフにフィードバック、問題点に気づいてもらったり、緊張感を持って仕事をしてもらったりという企業などもありました。この画像や動画を、各店舗で共有する仕組みを取ることで、店長は自分と他の店舗が具体的にどう違うのかを視覚的に分かるようにするそうです。このようにして店長、スタッフの意識やレベルが向上し、私たち消費者にいいサービスとして提供されるのはうれしいことですよね。

 このようなスマートデバイスの表現力を活用して、スタッフの教育に使うという企業もありました。外食産業は非常に多くのパートやアルバイトの人に支えられた業界だと思います。そしてスタッフのスキルが顧客の満足度を左右するという点でも、パートやアルバイトの教育というのは重要なテーマであると思います。

 以前は、スタッフの教育といえば紙のマニュアルか先輩からのOJTが中心でした。しかし、スマートデバイスを使えば動画で分かりやすいマニュアルが作れ、短期間でスタッフのレベルを引き上げられる。また、新商品に関するマニュアルも印刷の労力やリードタイムなく、即座に全店舗に配信することが可能になるという効果もあります。

 業界を問わず、スマートデバイスの表現力を生かすのも1つの典型的な使い方であると思います。

早田麻子(はやた・あさこ)さん

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)ICT第1営業本部ビジネスイノベーション営業統括部事業部長。京都市出身。1994年、同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒業。同年、山一證券入社。1996年、KCCS入社。1997年、情報通信営業部東京営業部のグループ長に赴任。2001年、首都圏営業1課課長。2004年、IPサービス事業本部 IPイノベーション営業部 部長に就任。2007年、東日本ICT 営業本部 東日本ビジネスイノベーション営業部 事業部長。2011年、組織変更に伴い現在の役職に至る。1女児の母。

 スマートデバイス導入に関しては、モバイル通信の普及当初からリモートアクセスサービス事業に携わり、その後MVNO事業の立ち上げに従事。最近は大手企業向けのスマートデバイス導入プロジェクトにもかかわり、その経験を基にスマートデバイス関連のセミナーで数多く講演。自身もモバイル環境を活用して積極的に仕事をこなす傍ら、母親としてのワークライフバランスを実践している。


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