スタートアップやベンチャーが合う人、合わない人未来の人事を見てみよう

米国の大学院で起業論を教えるHeffernan氏は、自由を求めてベンチャーで働く人が留意するべき4つのことを述べています。

» 2013年01月24日 16時30分 公開
[調祐介,Business Media 誠]
誠ブログ

 クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。2000年ごろのITブームとその後のバブルがまだ記憶に新しい人も多いのではないかと思いますが、昨今再び世界中でIT関連企業が注目を集めています。

 当然ながら日本でもその動きは活発で、特にノマドワーキング※に代表されるように、組織に頼るのではなく、個人が自立してベンチャーを立ち上げていく。そんな機運も高まってきています。

※オフィスに縛られることなく、飲食店などを活用し、働く場所を自由に選択しながら仕事をする働き方。

 かといって、全員が起業家になるのかというと、もちろんそうではありません。大抵は起業家が社長になり、その他の役員や社員がその組織に勤務する形になります。

 もちろん起業家になるための勉強や修行期間だと思って社員になる人もいれば、公共系の組織や大企業で働くのが嫌で、もっと自由を求めてベンチャーで働く人もいるでしょう。では起業家ではないけれども、起業家が興した会社で働く際に留意するべきことは何か?

 今回はCBS MoneyWatchでのMargaret Heffernan氏の論考を見ていきたいと思います。

 Heffernan氏は大学院で起業論を教えています。そこで述べているのは、「測られるべきなのは、輩出した起業家の数ではないはずだ」ということ。なぜなら、起業論を経ることで、自分が起業家には向いていないと悟ること自体が有用だと考えているのだそうです。一方、

I also think we do something useful when we prepare graduates to work in a startup because it isn't the same as a traditional, corporate job.

私はこうも考えている。恐らくわれわれが大学院生に対してスタートアップで働く準備をさせていることも有用なのだろうと。というのは、それは伝統的な、いわゆる企業と呼ばれる組織での仕事と同じではないからだ。

 では、何が異なるのか。Heffernan氏はその違いを4点あげています。

1. Insecurity/不安定性

 記事内で紹介しているHarvard Business Schoolのデータでは、ベンチャーキャピタルがバックアップしたスタートアップの4つに3つは失敗しているのだそうですね。

That means that startups can't guarantee a long term career and it also means that life in new businesses is a lot edgier than elsewhere.

このことはスタートアップが長期のキャリアを保障しないことを意味するとともに、新規ビジネスにおける日々が他のどこと比べてもかなり最先端であることを意味する。

 ここは好き好きで、合う人は合うし、合わない人は合わない、ということでしょうか。

2. Time/時間

 ベンチャーキャピタルから与えられた資金は限られています。当然ながら、仕事をする時間、期間も限られているわけです。そして、資金は最もインパクトの高いところに優先的に投資されます。

So these are not great companies for time off or vacations.

故に、これらの会社は休みやバケーションを取るのには向いてない会社だ。

 24時間仕事をする環境に耐えられるかどうか。

3. Flexibility/柔軟性

 ここでいう柔軟性は、ワークスタイルの話ではなく、もっと重要な事業内容や計画、戦略の話です。

You may not end up doing what you came for.

入社理由となった仕事をそのままずっと続けていくことはないだろう。

 そして、

It also means that you may join to do something that quickly becomes irrelevant and your job can disappear.

さらには何かをしようと思って入社したものの、その仕事が早々に無意味となって、仕事自体が無くなることもあり得ることを言意味するのだ。

 これまた好き嫌いで判断すべきものですね。

4. Opportunity/機会

 大企業ではなかなか得られない役割や役職を、スタートアップであれば早期に獲得できる可能性が高いのは事実です。

 結局のところ、

The basic job description for everyone in a startup is the same: Do whatever is necessary.

スタートアップにいる全員の基本的な職務要件は全て同じだ。必要なことであれば何でもやる。

 そして、

Start ups offer a lot of stretch and if you're up for, and have a good idea for what's needed when, you will learn a lot fast.

スタートアップは多くのストレッチさせた業務を振ってくるが、もしあなたがそれをクリアし、そして必要な時に最適な内容の良いアイデアを持っていれば、より多くのことをより速く学べるだろう。

 Hefferman氏はスタートアップの経営もしているのですが、まとめとして、

The best people I ever employed were those who weren't rattled by chaos but had a significant desire to sort it out.

自分が採用した中で最上の人々は、カオスともいえる大混乱の中でも平静さを失うことなく、それをなんとか解決する強い思いを持っていた者たちだった。

 また、

The worst people were those who thought that any startup was a path to wealth and early retirement.

最悪な人々は、すべからくどんなスタートアップ企業も富やアーリーリタイアメントへの道だとしか捉えていない人々だった。

 と述べています。


 いま就職活動をしている人で大手企業ではなくスタートアップをはじめとするベンチャー企業を志望している場合は、自分がこうした特徴にうまく合致するかをじっくり考えてみることをお勧めします。

 逆に大企業を志望している人は、上記のような特徴は得難いことを理解しておくことが重要でしょう。長年の下積みに耐えられるか、などですね。

 また、人事マネジメントを担当している人は、スタートアップが持っているこうした要素が、例えば企業内起業、新規事業のチームには必要になることを理解するのが重要かと思います。

 そういった部門の人が、従来の等級や評価、処遇などの人事制度の枠組みで果たしてモチベーション高く働き、成果を創出できるのか、考えてみる必要があるかもしれません。例えば分社化して別の制度を引く(籍を残すか残さないかは別として)、というオプションもあり得ますね。

※この記事は、誠ブログ「未来の人事を見てみよう:スタートアップ/ベンチャーが合う人、合わない人より転載、編集しています。

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