「自治体クラウド」化にも拍車ニュース解説:四国中央市の導入事例

四国中央市が全庁のPCにオープンソースのオフィスソフトを導入する。地方自治体のIT化における新たな動きとして注目される。

» 2009年04月01日 15時53分 公開
[松岡功,ITmedia]

 愛媛県の四国中央市が4月1日から、全庁で使う約1100台のPCのオフィスソフトを、無償のオープンソースソフト「OpenOffice.org」に入れ替える。これによって、今後5年間で約3300万円のコスト削減効果が見込めるという。

 中央政府や地方自治体はここ数年、IT化の推進に伴ってシステムのオープン性やコスト削減などの観点から、オープンソースソフトの活用を模索してきた。今回の四国中央市の取り組みは、その動きが着実に広がりつつあることを示した格好だ。

 中でもオープンソースのオフィスソフトとして普及が期待されているOpenOffice.orgは、企業での導入が着実に進みつつあり、先般、自治体で初めて会津若松市が導入に踏み切った。これを機に他の自治体でも導入を検討するケースが増えてくるだろう。

 今後に向けたポイントとして注目されるのは、特定のソフトに依存しない国際標準の文書フォーマット「Open Document Format」(ODF)への対応だ。これによって、作成した公式文書をWebで公開する際に、住民が有償のオフィスソフトを購入しなくても閲覧できるようになり、住民サービスの向上を図ることができるわけだ。

 電子政府や電子自治体の実現への取り組みが叫ばれて久しいが、ここにきて中央政府や地方自治体は、クラウドコンピューティングという新たなIT利用形態の出現に伴って、「霞ヶ関クラウド」あるいは「自治体クラウド」といった構想を抱き始めている。これらの構築にIT公共投資を生かすとともに、住民サービス向上の決め手にしようという狙いがある。その際には、オープン性はもちろん、昨今の経済情勢を踏まえたコスト削減が必須となる。

 行政におけるオープンソースソフトの採用は、こうした次なるIT化を促進する役目を担うことにもなりそうだ。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


過去のニュース一覧はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ