麻雀、ナナハンにハマった大学時代挑戦者たちの履歴書(54)

編集部から:本連載では、IT業界にさまざまな形で携わる魅力的な人物を1人ずつ取り上げ、本人の口から直接語られたいままでのターニングポイントを何回かに分けて紹介していく。前回までは、宇陀氏が慶応大学へ入学するまでを取り上げた。今回、初めて読む方は、ぜひ最初から読み直してほしい。

» 2010年09月29日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 中学、高校を通じて、勉強は数学が1番得意だったという宇陀氏。数学のテストでは度々満点を取っていたが、その半面、英語や古文などの文系科目にはあまり興味が持てなかったという。であれば、当然大学も理系に進学したのかと思いきや、実際には慶応大学の法学部に入学することになる。理系人間だった同氏が、なぜ法学部だったのだろうか?

ALT セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏

 「僕は6人兄弟の末っ子で、兄が3人いるんだけど、東大などの理数系に進学してたんです。なので、自分も本当は東大に行きたかったんですけど、兄貴が『兄弟で1人ぐらい弁護士がいたら、何かと都合が良いかも』みたいなことを言い出して、結局法学部を目指すことになった。でも、東大の文Iはとてつもなく難しいので、結局は慶応の法学部に、という感じだったかな。結構いいかげんな志望動機ですよ」

 なるほど。では、大学に入学した当初は、やはり弁護士を目指していたのだろうか? それとも、企業に就職することも頭にはあったのだろうか?

 「うーん、大学を受験するときに『こういう志があるので、こういう分野に進学したい』というのは、正直あまりなかったなあ。というのは、まだまだ世間を知らない年齢だし、自分の適性なんてまだ判断できないですからね」

 ましてや、将来IT業界で働こうなどというつもりも、当時はまったくなかったと言う。そもそも、宇陀氏が大学生だった1970年代後半から1980年代頭、まだ「IT業界」という言葉すらなかった時代だ。

 「それに、これは僕の持論なんだけど、目標をあまり細分化しすぎると、融通が効かなくなってしまうんですよ」

 計画は、漠然としている方が良いと同氏は言う。

 目標を数値化するのは良いことだが、当初計画をあまりにも詳細化してしまうと、そこから少しでもズレると“失敗”と評価されてしまう。逆に大ざっぱに設定していれば、ズレたらズレた分だけ新しい世界が見えて、新しい発見があって、「実はこっちの方が良いじゃん!」となることもある。だから、「当初の計画通りに!」とかたくなになるのではなく、環境の変化に応じて柔軟に計画を変更していく方が良い、と言うのだ。

 では、同氏は一体どのような大学生活を送っていたのだろうか?

 「麻雀はよくやってましたね。高校生のときに覚えたんだけど、大学に入った当初は同級生に随分カモられて、生活費を支えていた。でも、その後になってきっちり取り返しましたよ! 後は、テニスサークルなんかにも入ってましたね。でも、僕はボールを打つのが強すぎて、練習では全然ラリーの練習にならなかったり、ほかの皆は小洒落た格好で練習に集まってくるのに、僕だけナナハンのバイクで乗り付けたりとかね。ちょっと浮いた存在だったかもしれないな。でも、たまの参加でも歓迎されていましたよ」

 ナナハンのバイクで慶応のテニスサークルの練習に乗り付けるとは、何とも豪快なエピソードである……。ちなみに、バイクの趣味には一時期熱心にハマッていたそうである。高校生のころから兄と一緒にロードレーサーやモトクロスバイクなど、4台のバイクを所有していたという。

 「1度、バイクを分解してみたんだけど、その後組み立てられなくなって困ったこともあったなあ……。そう、思い出した! 学生時代に、バイクに乗っていたときにトラックにはね飛ばされて、意識不明の状態で病院に運び込まれたことがあった。もう、ヘルメットがグシャグシャになるほどの事故だったんだけど、結局すぐに意識が戻って、大したけがもなかったので、4日間の入院だけですぐ退院できたんだけど。それを見ていた後輩が、僕とは知らずに『あれは死んだね』って言っていたのを後で聞かされて……」

 やはり、かなりヤンチャもしていた青年期だったようである……。ところで、さすがにもうバイクには乗っていない?

 「さすがにもう乗ってないねえ! そんな時間もとれないし」

 そうか、残念。同氏がハーレーに跨っている姿などは、結構ハマりそうな気がするのだが。


 この続きは、10月1日(金)に掲載予定です。お楽しみに!

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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