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» 2012年01月20日 12時00分 UPDATE

挑戦者たちの履歴書(142):Firefox成功の要因は“ブログの口コミ”

編集部から:本連載では、IT業界にさまざまな形で携わる魅力的な人物を1人ずつ取り上げ、本人の口から直接語られたいままでのターニングポイントを何回かに分けて紹介していく。今回は、瀧田氏のMozilla Foundation立ち上げ時を取り上げる。初めて読む方は、ぜひ最初から読み直してほしい。

[吉村哲樹,@IT]

 1998年、Netscape Communicatorのソースコード公開からスタートしたオープンソースプロジェクト「Mozilla」は、本連載でこれまで紹介してきたように、さまざまな紆余曲折を経ながらも、多くのオープンソース開発者のボランティアに支えられながら、着々と開発が進められていた。その間、一般向けブラウザのシェアは、マイクロソフトのInternet Explorer(以下、IE)の独占状態が続いた。特に、Windows XPとともに提供されたIE6は爆発的に普及し、その結果多くのWebアプリケーションがIE6上での動作を前提に開発された。

 一方で、IEのシェア独占はさまざまな副作用をもたらした。その1つが、セキュリティの問題である。IEがあまりにも広く普及した結果、その脆弱性を突くウイルスや攻撃が横行する事態を招いてしまった。また、IE6にはWeb標準に準拠しない独自仕様が多く、一部のユーザーや開発者からは不満の声が挙がっていた。

 そんなさなか、Mozillaプロジェクトは「オープン」と「標準」を合言葉に、Web標準への準拠をより重視した新世代ブラウザの開発を着々と進めていた。そして、その初めての成果が、2004年11月にようやく世に出ることになった。「Firefox 1.0」である。

 こう書くと、いかにもFirefoxのリリースは順調に運んだように聞こえるかもしれないが、舞台裏ではさまざまな苦労があったようだ。当時、Mozilla Japanを正式に立ち上げたばかりの瀧田氏も、Firefox 1.0のローカライズには相当苦労したと振り返る。

 「私はそれまで、企業でのもの作りしか経験したことがなかったので、オープンソースの『自由で縛られない文化』とのギャップに戸惑う部分がありました。Mozilla Foundationでは製品のリリース日をもう決めているので、それに向けてコミュニティのメンバーに作業をお願いしないといけないんですが、“誰かに命令されてやる”というのはオープンソースの精神に反するわけです。なので、随分気を遣いましたね……」

 そんな苦労がありつつも、何とか2004年11月9日のリリース日を迎えることができた。このときのお祭り騒ぎと、その後に続くFirefoxの急激なシェア拡大は、多くの方にとって記憶に新しいところだと思うが、意外にも瀧田氏はここまでのインパクトは予想していなかったと言う。

 「オープンソースの製品ですから、実際にダウンロードして使ってくれるのは一部のコアな人たちだけだろうと思っていたんです。でもいざ蓋を開けてみたら、日本でもものすごい数の一般ユーザーがダウンロードしてくれました」

 瀧田氏も予想していなかった、このFirefoxの大ブレーク。その背景には、当時急激な勢いで広まりつつあったブログメディアの力があった。

 「ブログでの口コミから、一般の人たちの間でFirefoxの魅力が一気に広まったんです。ブログの口コミマーケティングが本格的に出てきたのはちょうどこのころだったんですが、当時お金が全然なかった私たちにとっては、ある意味ラッキーでしたね」

 また、Firefoxの急激な普及のおかげで、Mozilla Japanの逼迫(ひっぱく)した財政状況も一気に改善されることになった。米国のMozilla Foundationが、「Firefoxを介して、『Googleなどの検索サイトで生じたアフィリエイト収入の一部』を受け取る仕組み」を確立したのだ。その後Mozilla Foundationは、ここから得られる収入を管理するためにMozilla Corporationという子会社を設立する。そして、Mozilla Japanの活動資金も、ここから安定的に拠出されることになったのだ。


 この続きは、1月23日(月)に掲載予定です。お楽しみに!

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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