孫氏「最終的には愛を理解させたい」――ソフトバンクが人型ロボット「Pepper」で目指すもの

» 2014年06月05日 22時34分 公開
[田中聡,ITmedia]

 夏モデルの発表会を行わないソフトバンクが、6月5日に急きょ発表会を開催。そこで発表されたのは、世界で初めて人間の感情を認識するという人型ロボットで、“Android(スマホ)”ならぬ“アンドロイド(ヒューマノイド)”だった。ロボットの名前は「Pepper(ペッパー)」。フランスのアルデバラン・ロボティクスと共同開発し、製造は中国のフォックスコンが請け負う。

photo Pepperと握手を交わす孫代表

 ロボットのコードネームは日本の子どもをイメージして「タロウ」にしていたが、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏いわく、「世界中の人が覚えやすくて発音しやすい名前にしたかった」ので、「Pepper」と命名した。Pepperはまずは日本で2015年2月から発売し、将来的には世界展開も視野に入れている。販路はソフトバンクショップやオンラインショップを予定している。

photo 来店客数や笑顔を認識しながら接客してくれる
photophoto 「ウェーブが得意なんです」と話ながらくねくね動くPepper。ソフトバンクショップでもこんな姿が見られるかも?
photo 来場者に向けて話しかけるPepper

 価格は19万8000円(税別)。人型ロボットの価格としては安く、「利益は出ない」(孫氏)という。それでも、「低い値段と高い志で、当面は利益を度外視しても、PCと同じ値段で買えることにも力点を置いた。量産するようになれば、それなりのビジネスとして成り立つのでは」と孫氏が話すとおり、まずは人々に使ってもらうことを優先した形だ。なお、Pepperのハード/ソフトの保守費用は別途かかる見込み。

 Pepperは、周囲の状況を把握して行動をする独自のアルゴリズムや音声認識技術に加え、“感情認識機能”を搭載しているのが最大の特徴。ユーザーの表情や声のトーンを読み取って人の感情を推定でき、その感情に応じたさまざまな対応が可能になる。孫氏も「ロボットで人の感情を認識するのは初めて。空気を読んで人々を笑顔にする」と胸を張る。

photophoto プログラミングで動く従来のコンピューターに対し、パーソナルロボットは家族の喜びのために動く(写真=左)。感情エンジンとクラウドAIがパーソナルロボットの特徴(写真=右)
photophoto 「褒められるとうれしい」という感情をロボット自身が学習していく(写真=左)。「ありがとう」と伝えると、「良いこと」だと認識する(写真=右)

 人との対話を通じて学習して、成長する機能も実装される。こうして学習したデータはクラウド上に格納され、集合知としてほかのPepperも潜在的に学習していく。家庭のプライバシーに関わる情報は保護されるとのこと。「『うれしい』『ありがとう』という気持ちを学習し、よいことだと認識する。感情を数値化して、自立して学習する」(孫氏)。

 Pepperをベビーシッターとして子どもをあやしたり、パーティープロモーターとしてダンスや歌で盛り上げたりといった使い方も想定される。誕生会で子どもがケーキのロウソクを消す瞬間など、感情の振れ幅の大きなシーンは特に重点的に記録し、普段の感情は簡略的に記録するなど、効率よく学習ができる。

 クラウド上でデータをやり取りするための通信にはWi-Fiを使用する。Pepper(の初号機)は3GやLTE通信はサポートしていないが、「LTEのチップも近いうちに載せたい」と孫氏は話していた。

photophoto クラウドAIにより、ほかの家庭で使われているPepperの学習を共有できる(写真=左)。家族の習慣や趣味を学習し、世界中の集合知を共有する(写真=右)
photophoto ベビーシッターやパーティープロモーターとしての役割も期待される
photophoto 従来ロボットの能力は限定的で成長の余地はないが、パーソナルロボットは空気を読んで、学びながら成長する
photo 人型ロボットの目指す未来について「愛」を強調する孫氏

 Pepperは6月6日からソフトバンク表参道とソフトバンク銀座に設置され、来店者とコミュニケーションを楽しめる。ソフトバンクショップに設置するPepperは、30分おきに歌ったり踊ったりといったショーを披露する。さらに、人工知能を活用した対話も行える。「お客さんの感情を認識するので、たくさん喜んでもらったダンス、あいさつ、ジョークはしっかり記憶して、それをもっと受けるようにほかの店で実行してくれる」(孫氏)

 どこまで会話ができるのかが気になるところだが、現在はPepperにインストールされたアプリの中で、あらかじめ用意されたシナリオをベースに話すのだという。発表会でも孫氏と流暢に会話としていたが、これもアプリによるもの。フリートーク(自然対話)にも対応しており、孫氏いわく「7〜8割は会話として成立するレベルに来ている」そうだが、フリートークには感情認識機能を入れていない。孫氏は「近い将来、フリートークも進化させ、感情を認識できるようになれば、自我を持てる」と期待を寄せた。

 Pepper上で利用できる「ロボアプリ」を開発するためのSDK(ソフトウェア開発キット)も提供する予定だ。開発者向けには表参道と秋葉原にアプリを開発、体験できるアトリエを今夏にオープンし、秋にはテックフェス(仮称)を開催することも予定している。PepperのOSには、アルデバランが開発しているロボット「NAO」向けと同じ「NAOqi(ナオキ)」を採用し、NAO向けのアプリは互換性があるという。

 連続稼働時間は12時間以上を実現した。これは、Pepperを2本足にしなかったことが功を奏している。孫氏によると、2本足にすると、現状では30分〜1時間ほどしかバッテリーが持たないそうだ。「12時間動かすために、あえて2本足を外して安定的に動けるようにしたが、5〜10時間持つのなら、2本足にすることもあり得る」(同氏)

 「愛を持ったロボット」の開発をソフトバンクのビジョンに掲げる孫氏。Pepperは、このビジョン実現に向けた第1号機となる。「Pepperが人間と同じようにすべてのことをできるとは思っていない。あくまで第一歩。人間の感情の中で一番難しいのは愛だと思う。喜んでいる、つまらなそうにしているといった感情は理解しやすいが、最終的には愛を理解させたい」と意気込みを語った。

photophoto 「自らを犠牲にしても、愛のために自らの意志で動くロボット」を目指す
photo ゲストとして登場した、宮迫博之さん、橋本環奈さん、樋口可南子さん、上戸彩さん、ダンテ・カーヴァーさん、お父さんと並ぶPepper

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