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誰でもロボットをプログラミングできる――「Scratch」で「Romo」を遠隔操作するアプリが登場

» 2015年02月03日 16時39分 公開
[ITmedia]

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボが開発した教育用プログラミング環境「Scratch」(スクラッチ)をご存じだろうか。複雑なプログラムを感覚的に作成できるビジュアルプログラミング環境で、世界中の教育現場で活用されている。その「Scratch」を使い、エデュケーショナルロボット「Romo」を遠隔操作するiOS用アプリ「Scratch2Romo」が登場する。

「Romo」は、米Romotiveが開発したエデュケーショナルロボット。国内ではセールス・オンデマンドが昨年夏から販売している。価格は1万4500円(税別)

 Scratchでは、「ブロック」と呼ばれる構文を積み重ねていくことでプログラムを作成する。ブロックには「もし〜」など条件を設定するものや、変数を入力するタイプもある。それらをドラッグ&ドロップで並べていくだけでプログラムが完成するという。「リコンパイルなどは必要ない。Scratchなら、本当にブロックで遊ぶようにプログラムできる」と話すのは、阿部和広先生だ。阿部先生は、青山学院大学と津田塾大学で教鞭をとる一方、Scratchの日本語化や関連書籍の執筆などを通じて日本の教育現場にScratchを広める活動をしている。

Scratchでは、「ブロック」と呼ばれる構文を積み重ねていくことでプログラムを作成する

 Scratchはこれまで、スタンドアロンのアプリケーションだったが、新しいVer.2.xでWebアプリに移行。ブラウザ上で動作するため、ソフトのインストールが制限される学校内でも使いやすくなった。しかも無料でオープンソース。全世界の登録ユーザー数は530万人だが、「登録しなくても使えるため、実際はその数倍はいるはず」。

Scratchを体験した子ども達の感想を紹介する阿部先生。感想からは、常識の枠を超えて楽しむ子ども達の姿が伺えるという

 もう1つの大きな特長は、Scratchがコミュニティとして機能することだ。既に800万もの作品が公開されており、すべてクリエイティブコモンの扱い。誰かの作品に手を加え、また別のものを作ることができる。「著作権教育では、『他人が作ったものを真似してはいけない』と教えなければならないが、モノ作り教育では逆。人の肩に乗ることで、より遠くが見渡せるようになる」(阿部先生)。

子どもが作成したゲームの例。妖怪につかまった女性を助けるため……

漢字クイズに挑戦。ちなみに問題の漢字は制作者直筆だ

 Scratchの掲示板には『三角関数について教えてください』といった書き込みもあるという。「なぜかといえば、ゲームを作るのに必要だから。それにまた別の子どもが答えている」。公開された作品を見て別の子どもが刺激を受け、新たにイメージを膨らませるといった“Creative Learning Spiral”が生まれている。

バーチャルとリアルをつなげる「Scratch2Romo」

 Scratchには、外部機器を制御するための「遠隔センサープロトコル」が実装されている。これを使うと、「Scratchセンサーボード」をはじめ、LEGOの「マインドストーム」やマイクロソフトの「Kinect」など、さまざまな機器を活用できる。

「Scratch2Romo」の開発と販売を担当する合同会社つくる社の石原淳也氏

 新しい「Scratch2Romo」は、このプロトコルを用いて「Romo」を動かすiOS用アプリだ。Scratchから命令を出し、Romoとその頭脳であるiPhoneのサンサーから情報を取得できる。Romoの移動をはじめ、iPhone内蔵のマイクで集音したり、フラッシュを点灯させたり、あるいはカメラで撮影するといったことが行える。利用できるコマンドは今後も増える見込みだ。

Romoに指示できるコマンド一覧

 「Scratch2Romo」の開発と販売を担当する合同会社つくる社の石原淳也氏は、「ScratchとRomoがつながることでバーチャルな世界に閉じない、リアルに働きかけることのできるロボットを子ども達自身が作り出す可能性がある」と指摘。教育現場への導入を訴えた。

 「Scratch2Romo」は2月下旬に発売する予定で、価格は1500円。対応端末は、iPhone 4/4s/ 5/5c/5s、第4世代、第5世代のiPod touch。iOSは7.1以上。起動回数に制限を設けた無料の試用版も用意する。

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