SBドライブと鳥取県八頭町が自動運転で解決したい、過疎地の公共交通の課題とは

» 2016年06月01日 06時00分 公開
[神尾寿, らいら,ITmedia]
さんさんバス

 ソフトバンクグループのSBドライブと鳥取県八頭町が5月23日、自動運転技術を活用した実証実験に連携して取り組むと発表した。2018年以降の自動運転実用化に向け、調査や試験走行、環境整備などを協調して進め、地域住民の移動手段の利便性向上と公共交通の課題解決を図るという。

SBドライブと八頭町 協定書調印式に出席した(右から)林昭男鳥取県副知事、SBドライブ佐治友基社長、𠮷田英人八頭町長、谷本正敏八頭町議会議長

 SBドライブは、2016年4月に設立したソフトバンクのグループ会社で、東京大学発のベンチャー企業、先進モビリティと提携して自動運転技術と関連するサービスの開発・事業化に取り組んでいる。すでに北九州市と同様の連携協定を結んでおり、鳥取県八頭町は自治体と取り組むプロジェクトの第2弾となる。

 なぜ、SBドライブが鳥取県でこのような実験を行うのか。

 八頭町では、2009年度から町営バスの「さんさんバス」を運行している。しかし、ドライバーの高齢化や運行経費の削減が課題になっている。このような過疎地ならではの交通問題に対応するため、今回のSBドライブと八頭町の連携協定では、2020年に向けてバスの自動運転化を目指すというのだ。法的整備等が整ったところで本格的な事業運営が可能となるよう実験を進めていく。

SBドライブと八頭町 八頭町内を運行する町営バス「さんさんバス」。一律100円で利用できる

 八頭町郡家駅で行われた協定書調印式で、SBドライブの佐治友基社長は「いきいきと生活するためには移動の自由が必要。運転のできない子どもや高齢者も自由に移動できれば、が賑わい経済的にも豊かになる。安全、簡単、安価に移動できる手段を提供したい」と熱意を語った。

SBドライブと八頭町 SBドライブの佐治友基社長

 八頭町長の𠮷田英人氏は、今回の実証実験について「先駆的な取り組みだと思う。役所としても法的な支援が必要になると思うので、SBドライブとしっかり協力してやっていきたい」と意気込む。しかし調印式では「個人的には無人でバスが走るなんて想像できないほどの驚きですが、実現するのですね」と冗談交じりに佐治社長へ確認を取る場面もあり、期待感といまだ信じられない気持ちが入り混じっているようだった。

SBドライブと八頭町 八頭町長の𠮷田英人氏

 鳥取県副知事の林昭男氏は、「公共交通は利用者の少ない地域ほど行政コストがかかるので、自動運転によって解決できれば」とコメント。「障害者など運転が難しい人でも利用できるようになれば共生社会にもつながっていくはず」と大きな期待を寄せた。

SBドライブと八頭町 鳥取県副知事の林昭男氏。「地域間競争が起こるなか、スピーディーに協定が進んだのは素晴らしいこと」と八頭町を評価した

段階を追って自動運転を実現

 今後の実証実験では、まず住民にヒアリングをしてニーズを見極めながら、バス走行環境の研究調査を始める。懸念点となる安全性については「いくつもの安全策を巡らせる」(佐治社長)計画だ。

 最初は私有地から走行実験を始め、公道に出てからも交通量が少ない場所や夜間など、場所を選びながら実証を進めていく。その際にも時速10km以下のゆっくりしたスピードから始め、さまざまな天候条件下で調査し、徐々にスピードを上げていくという。

SBドライブと八頭町 自動運転技術について説明する佐治社長

 ドライバーについても同様だ。最初は有人運転の補助システムとして自動運転を同時に扱い、次に手放し運転、最後に無人運転と、徐々に自動化レベルをアップさせる。

 佐治社長は「トラブルや事故を想定し、既存の交通事業者からアドバイスをいただきながら、最適な安全管理の仕組みづくりをしていきたい」とバス会社をはじめとする公共交通事業者との連携にも取り組んでいく姿勢を見せた。

 今回の実証実験はルートの決まった運行バスから始まるが、「徐々に行ける場所を増やし、最終的にはどこでも行ける自動運転車を実現していきたい」(佐治社長)。その際にも、タクシー迎車ボタンを用意するなど、ユーザビリティを高めた仕組みづくりを目指すという。

SBドライブと八頭町 協定書に調印するSBドライブ佐治社長(右)と𠮷田八頭町長(左)

誰もが安心して自由に移動できる世界を作れるか

 近年はニュースでもっぱら自動運転が話題を集めているが、無人の車を走らせるだけでは自動運転は普及しない。誰もが安く、簡単かつ安全に利用できる仕組みと環境づくりが重要になる。

 スマートフォンを持たない子どもから自動運転技術を知らない高齢者まで、誰もが安心して自由に移動できなければ、自動運転の意味はなくなってしまう。人口1万7千人の八頭町とSBドライブが、今回の実証実験を通して、自動運転技術を街にどう溶けこませ、人々の暮らしを、どのようにしてよりよく変えていくのか注目である。

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