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» 2017年08月25日 13時53分 公開

遅れてきたイマーシブサウンド、「Auro-3D」

デノンのAVアンプ新製品が対応した「Auro-3D」(オーロスリーディー)とは? その開発者であり、「イマーシブサウンド」という用語の提案者でもあるWilfried Van Baelen氏が解説してくれた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 デノンは、「Auro-3D」(オーロスリーディー)対応のAVアンプ「AVR-X6400H」「AVR-X4400H」を9月中旬に発売する。2年以上前から話題に上りつつ、なかなか対応製品が出てこなかったAuro-3Dとは一体どのようなフォーマットなのか。

Auro-3Dを開発し、「イマーシブサウンド」という用語を定義したWilfried Van Baelen氏

 Auro-3Dは、ベルギーのGalaxy Studioで「イマーシブサウンド」(=3次元音響)という用語を定義したWilfried Van Baelen氏が開発した技術だ。視聴空間に3つのレイヤーを定義し、もっとも低いレイヤー1と、その上のレイヤー2が連続した“垂直ステレオ音場”を作り出すことにより、垂直方向の音再生に優れているのが特徴。「“垂直ステレオ音場”は、人が日常的に耳にする自然な音に近い。すべての音に取り囲まれる感覚を楽しめる」(Baelen氏)

3層の音響空間で縦方向のステレオ音場を作り出す

 またイマーシブサウンドとして知られるDolby AtmosやDTS:Xがオブジェクトベース技術のフォーマットであるのに対し、Auro-3Dは従来型のチャンネルベース。各チャンネルは96kHz/24bitのハイレゾ音声で、技術的には最大384kHz/24bitまで対応可能だという。家庭用のサラウンドシステムとしては、従来の5.1chシステムに4つのハイトスピーカーを加えた“Auro 9.1”から、7.1chに5つのハイトスピーカーと天井スピーカーを加えた“Auro 13.1”(最大13.1ch)まで対応するスケーラブルな技術となっている。

5.1chシステムに4つのハイトスピーカーを加えた“Auro 9.1”システム。天井スピーカーを省いた2レイヤーのシステムとなるが、垂直ステレオの音場を作り出すのは下の2つのレイヤーだという
家庭用レイアウトの種類

 音楽スタジオから生まれ、チャンネルベースであるために音楽製作時のマスタリングプロセスを維持できる唯一のイマーシブサラウンドフォーマットでもあるAuro-3Dは、まずクラシック音楽のコンサートタイトルなどに多く採用された。

現在、日本でも入手できるAuro-3D対応ソフトの数々。映画もあるが、高音質で知られる2Lのクラシックタイトルが多い

 しかし現在では、デジタルシネマや車載、ゲームなど幅広い市場に向けて技術開発を進めている。Baelen氏は2010年に新会社AURO TECHNOLOGIESを設立。翌2011年からは同じベルギーに本拠を置くBarcoと組み、デジタルシネマ用のイマーシブサウンドシステムとして「Auro 11.1 by Barco」を展開。現在では世界650以上の映画館に導入されている。

 一方、制作側でもハリウッドのスタジオを含む40以上のポストプロダクション設備にAuro-3D対応のシステムを導入。既に200を超える映画がAuro-3Dでリリース済みだ。これには「スパイダーマン」(2、3)や「ゴーストバスターズ」(UHD BD)など有名な作品も含まれている。

「ゴーストバスターズ」のUHD BD

 なお、デジタルシネマ用のAuro-3D(AuroMax)はチャンネルベースとオブジェクトベースの両方を使用したハイブリッドな技術で、最大26.1chまで対応可能。これをBlu-ray DiscやUltra-HD Blu-rayといった民生用パッケージソフトにする場合、オブジェクトベースの部分をチャンネルベースに「混ぜ込み」(同氏)、さらにDTS HD-MA(Master Audio)として収録する形になる。このため、Auro-3D非対応のAVアンプでもDTS HD MAとして再生できるという再生互換性も獲得した(品質は同一ではない)。

デノンは初期からサポート

 デノンでは、2年半前から欧州でAuro-3D対応を進めてきた。「2014年、『AVR-7200W』で有償アップデートによるAuro-3D対応を開始し、7500人を超えるユーザーがアップグレードを行った。現在は16機種まで対応モデルを拡大し、とくにドイツのユーザーに高く評価されている」(デノン取締役の中川圭史氏)。評価された理由の1つは、やはり音楽コンテンツが充実していることだ。中川氏は、「クラシックコンサートの臨場感はまさに秀逸。今までのフォーマットにはない感動を経験できる」と太鼓判を押す。

 ただし、当時は対応コンテンツがクラシックに偏り、タイトル数も少なかったために日本導入は見合わせていた。その後、映画分野でSony Picturesが数十タイトルの投入を表明するなど状況が変化し、さらにAuroから独自のアップミックス技術「Auro-matic」(オーロマティック)が登場したことが日本市場への投入につながった。

 Auro-maticは、モノラルソースからでも自動的にイマーシブサラウンド音場を作り出すというもの。「この技術の開発には10年を超える歳月を費やした。いかなるコンテンツでも自然なイマーシブサラウンドになる」というBaelen氏。「もうコンテンツの問題は存在しない」と胸を張った。

 デノンの中川氏は、「Auro-3Dをスタートからサポートしてきたブランドとして、日本市場での発売はとても感慨深い。世界中のユーザーにAuro-3Dで新しい感動と卓越した3D効果を提供していきたいと考えている」とした。

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