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» 2004年02月10日 17時45分 UPDATE

NokiaのSymbianへの出資増が示すモバイル市場の変化

NokiaがSymbianへの出資を強化することで、Nokia対Microsoftの図式が明確に。しかしこの背景には、モバイルインターネットサービスの普及によって、主導権が通信オペレータに移りつつあるという流れもある。Symbianへの影響力増加はこれに対するNokiaの対応策ともいえる。

[末岡洋子,ITmedia]

 フィンランドのNokiaは2月9日、英Psionより同社が所有する英Symbianの株式31.1%を購入する計画を明らかにした。購入金額は約1億3570万ポンドになる見込み。英SonyErricsonなど、他のSymbian株所有社が株式優先買取権を行使しなければこの取引は完了し、Nokiaの所有率は63.3%と過半数を占めることになる。1998年、対Microsoft戦に備えて端末メーカーが集まって結成したSymbianだが、事実上Nokiaの手に落ちることになりそうだ。

 Symbianは、スマートフォンおよび携帯電話向けOS「Symbian OS」(2003年6月の記事参照)の開発とライセンス供与を行っており、1998年にNokia、Psion、当時のEricssonが共同出資してPsionのOS部門を独立させたのが始まり。その後、米Motorola、パナソニック、独Siemensが資本参加し、昨年は韓Samsungが新たに参加しMotorolaが撤退した。今回のPsion撤退で、資本参加企業は、Nokiaのほか、パナソニック、Siemens、SonyEricsson、Samsungの合計5社となる。

 端末メーカーが共同でサポートする中立的存在であったSymbianが大きな転換点を迎えたのは、昨年のMotorolaの撤退時だ。

 Motorolaが売却する以前の株式保有率を見てみると、Psionが25.3%で最大、Nokia、Motorola、SonyEricssonがそれぞれ19%で並んで2番手、とバランスを保っていたが、Motorolaの所有していた株式をPsionとNokiaが購入、NokiaはPsion(31.1%)を抜いて32.2%で最大株主となった。

 Nokiaの影響力の大きさが指摘され始めたのはこの頃からで、関係者の間で今回のNokiaとPsionの動きを予想する声も上がっていた。今回のPsionの売却により、資本参加企業の株式保有率は、Nokia(63.3%)、SonyEricsson(19%)、パナソニック(7.9%)、Siemens(4.8%)となり、事実上Nokiaが支配権を持つことになる。

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 NokiaがPsion株を購入したあとのSymbianへの出資比率

 Nokiaは発表資料の中で、今回の決定は、今後の高度なモバイル端末に必要となる中核プラットフォーム技術としてのSymbian OSに寄せるNokiaの信頼性がベースにあると述べている。また、Symbianは今後もフェアで差別のないライセンス事業を継続するとしている。

主導権がオペレータに移行

 Nokiaのこの動きの背景には、変わりつつある欧州におけるモバイル市場の流れがある。これまで端末メーカー主導で動いてきた欧州モバイル市場だが、日本のiモードやVodafone live!に代表されるデータ通信サービスがユーザーに受け入れられつつあり、主導権はオペレーターに移りつつある。

 これらオペレーターはNokiaに依存しない戦略をとっており、同社と真っ向から対立するのを避けるために日本を含むアジアの端末メーカーと組むことが多い。今回の動きは、そのような流れに対する世界最大手の端末メーカーであるNokiaの取った対策といえるだろう。

 また、Microsoftとの対決で、Nokiaが本腰を入れ始めたこともある。端末出荷台数という点では世界を制覇しているNokiaだが、同社はプラットフォームを所有していない。NokiaがSymbianを管理下に入れることで、Microsoft戦におけるOSでの戦略がとりやすくなることはいうまでもない。

 ちなみに、2003年世界携帯端末市場において、Microsoftベースの端末の出荷台数は180万台で、Symbianベースは830万台となっている。だがMicrosoftの積極的な戦略の成果は現れ始めており、差は縮小傾向にある。そして、この傾向は将来さらに加速することが予想されている。いずれにせよ、今回の取引により、Nokia対Microsoftの構図がさらに明確になるだろう。

 だが、今回のNokiaの動きに対し、アナリストの反応は好意的ではないようだ。調査会社の英OvumのテレコムITプラクティス・リーダーのジェシカ・フィギュエラ氏は、「Nokiaにとっては、おそらく正しい動きではないだろう」と述べている。オペレーターのNokia離れは進んでおりNokiaもそれに気が付いているが、「端末の出荷台数だけに依存できる時代ではない。Nokiaの事業多様化を助ける他社(オペレーターや他のSymbianライセンス取得端末メーカー)との協力関係を遠ざけるような行為を取るべき時代ではない」(フィギュエラ氏)

 今年IPOもうわさされていたSymbianだが、今回のNokiaの動きに対して他社が株式優先買取権を行使したとしても、Nokiaの影響力拡大は避けられない。昨年撤退したMotorolaはその後、LinuxやMicrosoftの採用を発表するなど自由な独自戦略をとっており、引き続きSymbianメンバーとして残っているSonyEricssonやSiemensの動きが注目される(SamsungはMicrosoftもサポートしている)。

 PsionはSymbianの株式放出後、コアの事業であるPsion Teklogix開発に専念すると述べている。

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