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» 2004年03月03日 06時55分 UPDATE

ドコモ、最大14MbpsのHSDPAをデモ

横須賀リサーチパーク(YRP)のドコモR&Dセンタで、試験機器を使ったHSDPAのデモンストレーションが行われた。W-CDMAの進化形であるHSDPAは、平均速度2M〜4Mbps。CDMA2000 1x EV-DOと比較すると「要素技術としては似たようなものだが、EV-DVに近い」という。

[斎藤健二,ITmedia]

 ドコモが2005年の導入に向けて開発を進めている高速パケット通信技術「HSDPA」。横須賀リサーチパーク(YRP)のドコモR&Dセンタで3月2日、記者向けにデモが公開された。

hsdpa1.jpg HSDPAをデモンストレーションするIPネットワーク開発部の尾上誠蔵部長。右はHSDPAの屋外試験の測定結果。移動状態でも2M〜10Mbpsの速度が出ている

W-CDMAのエボリューション「HSDPA」

 下り最大通信速度384Kbpsの現行W-CDMA方式を拡張し、最大で14Mbps、平均して2M〜3Mbpsの通信速度を実現するHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)。

 その特徴をIPネットワーク開発部の尾上誠蔵部長は、「とにかく伝送効率が良く、それによってビットコストも低減する」と説明する。現行FOMAの通信方式W-CDMAに比べると、実に伝送効率は3〜4倍。まずは概要を簡単にまとめておこう。

通信方式 現行W-CDMA HSDPA
音声通信 ×
上り速度 最大384Kbps ×
下り速度 最大384Kbps 最大14Mbps
 HSDPAは周波数幅など基本部分をW-CDMAから引き継いでいる。大きな違いは、下りのパケット通信専用の技術だということ。この点もCDMA2000 1x EV-DO(KDDIが1X WINとしてサービス中)と似ている部分だ

 両方式の大きな違いは、電波状態によって通信速度が変化する点だ。「W-CDMAはセル(ひとつの基地局がカバーするエリア)の端でも384Kbps出るが、セルの中心でも速度は同じ。HSDPAは場所(電波状態)によって変わる」(尾上氏)。

 屋内にHSDPAのIMCS基地局を設置した場合のような、基地局直下の状態では14Mbps。基地局近辺の電波状態がいい場所では7M〜8Mbps。セルの端の周囲からの雑音が多いような場所では2Mbps程度と変化する。これは電波状態に応じて、2ミリ秒ごとに変調方式や符号化率を制御しているためだ。

hsdpa4.jpg 基地局との場所によって変わる電波状態に応じて速度も変化する。右はデモ環境で電波状態を変化させ、速度が変わる様子をグラフにしたもの
hsdpa5.jpg 電波状態にかかわらず一定速度となるW-CDMAと違い、HSDPAは大幅に速度が変化する。右の図では、W-CDMAが一定速度保証のために送信電力にマージンを見込んでいるのに対し、HSDPAはTDM方式で各ユーザーに最大電力で送信しているのが分かる。電波状態に応じて速度が変わる大きな理由は変調方式や符号化率を変えているため
方式 R99 W-CDMA 比率 R5 HSDPA
速度 384Kbps 35倍 約14Mbps
変調速度 QPSK 2倍 16QAM
符号化率 1/2.2 2.2倍 1
コード使用率 0.165 7.5倍 0.94
 変調速度で2倍、符号化率で2.2倍、さらにコードリソースの16分の15を1ユーザーに割り当てて、W-CDMAの35倍の速度を実現する。ただし、符号化率1などは非常に電波状態が良く誤り訂正をほとんど必要としない状態の数字で、変調速度も電波状態によって変化する。2ミリ秒単位の瞬間速度が最大14Mbpsとなる。さらに複数ユーザーが同じセルにいた場合、速度をシェアするため、「1人あたりの平均としては2M〜4Mbps」(尾上氏)という速度となる
 ※R99は現行FOMAが採用しているW-CDMAの3GPP仕様。HSDPAはRelease 5(R5)で規定されている。さらにRelease 6では、マルチメディア同報・放送型通信(マルチキャスト)のMBMS、Uplink(上り方向)のエンハンスも仕様化される
hsdpa2.jpg 右はHSDPAの基地局。左はHSDPAの端末。フェージングシミュレータにより、実際の無線環境を模した状態でデモが行われた
hsdpa3.jpg デモ環境で2台の端末に動画を送信するデモ。平均して2Mbps程度の速度が出ている

HSDPAとEV-DO〜「要素技術としては似たようなもの」

 こう見ていくと、HSDPAがCDMA2000 1x EV-DO(2001年7月の記事参照)とよく似た通信方式であることが分かる。HSDPAでも、複数のユーザーの中から電波状態が良好なユーザーへのデータ送信を優先しつつ、平均では公平となるようなスケジューリングを行うなど、「要素技術としては似たようなもの」(尾上氏)だ。

 では違いは何か。

 まずは「1つのキャリアでパケットと回線交換の両方を使えるところ。EV-DOよりEV-DVのほうが近い」(尾上氏)。EV-DOは、1.25MHz幅の1キャリア単位で、EV-DOに使うかCDMA2000 1xに使うかを設定する。HSDPAでは1キャリアにHSDPAパケットと回線交換、R99パケットの混在が可能だ。ちょうどEV-DV(Evolution Data and Voice)に近い(2001年7月の記事参照)。

 もうひとつは1キャリアあたりの周波数幅の違いだ。「(HSDPAは)広帯域であるため、効率と速度の面でEV-DOより有利。ユーザーダイバーシティの効果も高い」(尾上氏)。HSDPAの周波数幅が5MHzなのに対し、EV-DOは1.25MHz幅。周波数幅が広い分、1キャリアあたりの通信速度は増している。複数ユーザーがセル内にいる場合、電波状態のいいタイミングを見計らって通信することで、セル全体のスループットを向上させる「ユーザーダイバーシティ」も、広帯域のHSDPAのほうが有効に働く。

導入は2005年予定〜当初端末は3.6Mbpsから

 HSDPAは、EV-DOと同様に従来のW-CDMA基地局をアップグレードすることで対応が可能だ。基地局のベースバンド部の交換と、ソフトウェアのアップグレードで対応できる。装置の価格アップは数割程度だが、効率アップによって収容加入者数は3〜4倍になり、大幅なビットコストの低下が可能となる。

 また、HSDPA対応端末では受信ダイバーシティの実装も想定されている。ダイバーシティは複数のアンテナを用意し、入力を選択・合成することで信号強度を上げる仕組み。KDDIのEV-DO端末の一部では採用されているが(2月13日の記事参照)、ドコモのW-CDMA端末では今のところ採用例がない。

 電波状態によらず384Kbpsが保証されるW-CDMAと違い、電波状態によって速度が変化するHSDPAでは「受信ダイバーシティを実装すると、端末のユーザーにメリットがある。いい端末を開発する、メーカーへの動機付けになる。ネットワーク側でもキャパシティアップにつながる」(尾上氏)。

 HSDPA技術は2月から6月にかけて、屋外での試験も行っており、導入は2005年になる予定だ。なお端末側は当初、最大3.6Mbpsでの対応となることが、ドコモの立川敬二社長から明かされている(1月16日の記事参照)。

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